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(2011年7月1日~)
ホスピス・緩和ケアに関する調査研究報告
2002年度調査研究報告


■大学医学部の緩和ケア教育カリキュラムと教科書の作成と提言 <2P>

3. 結果

 17大学からシラバスの提示があった(表1)。
単講座でないシラバスは8大学あり、その他は麻酔科・外科が単科で担当していた。8大学のシラバス調査結果と九州大学の集中講義内容[文献4]を以下に示す(順不同)。
表1:シラバス掲示大学
杏林大学、慶応義塾大学、昭和大学、
聖マリアンナ大学、東京大学、
東京医科歯科大学、東京女子医科大学、
東邦大学、東北大学、徳島大学、
日本大学、弘前大学、福島県立医科大学、
藤田保健衛生大学、横浜市立大学
琉球大学、和歌山県立医科大学
(50音順)
大学例1:
2年次薬理学で、モルヒネによる癌性疼痛の治療、
4年次で、緩和ケアを考える、在宅ホスピスケア、ホスピスケア、癌性疼痛の治療、
5年次の麻酔科学として、癌患者の痛みの治療、在宅医療、緩和ケアセンターでの実習、神経ブロックによる痛み治療、
6年次で、ホスピス、緩和ケアセンター、在宅専門医院での実習が行われていた。

大学例2:
4年次、麻酔科系統講義で緩和医療、
5年次、BSLプライマリーコースで講義(緩和医療)と実習、
6年次、BSLアドバンスコースで緩和医療実習(在宅ホスピス実習あり)、
4年次、公衆衛生学担当でターミナルケア(ターミナルケア、緩和医療、ホスピス)、
1年次、人文社会学系で人の死と法(安楽死、尊厳死)、選択科目で死生観について15コマが行われていた。

大学例3:
4年次、医の倫理、患者の人権で、
1) 医の倫理と医師の義務:d. 患者の権利と自己決定権、e. インフォームド・コンセント、
2) 医師と患者および家族との関係:a. 患者中心の医療、b. 患者および家族の医療への参加、c. 患者の価値観の尊重と自己責任、
3) 末期患者への対応:a. 身体的苦痛の除去、b. 精神的・社会的苦痛の除去、c. ホスピス、d. 小児の特殊性、e. 尊厳死、 治療の基礎では、
4) 末期患者の治療でa. ターミナルケア、b. 対症療法、c. 尊厳死、リビングウイルが行われ、この他精神科でリエゾン精神医学が行われていた。

大学例4:
4年次心療・ターミナル医学分野で緩和医療、
終末期における症状コントロール
 (1)痛みの治療について、
終末期における症状コントロール
 (2)痛み以外の症状緩和、
告知と家族ケア、
緩和医療における精神面のケア、リエゾン精神医学総論
が行われ、総合診断実習の緩和医療-患者の精神面への対応では教官による導入、症例呈示による問題提起、小グループに分かれての問題討論、全体討議が行われていた。

大学例5:
1年次人間科学系の世界の宗教の中で宗教と医療活動、宗教と死生観、生と死の医療観、医学序論でターミナルケア、課題別ワークショップで看取りの文化を考える、
4年次麻酔科でがんの痛みへの対応、精神神経科でコミュニケーション精神医学(ターミナルケアも含む)、リエゾン精神医学、医療管理学でターミナルケア、医師患者関係と患者の権利、
6年次PMP.CC講義では病名告知と緩和ケア:悪いニュースを伝えるためのスッテプ・アプローチが行われていた。

大学例6:
1年次医療総論で緩和医療:病名告知について、
4年次の医学概論で緩和医療総論、インフォームド・コンセント、癌の告知、症状の緩和1)薬物療法、2)麻酔科領域、3)外科領域、精神的ケア、緩和医療の実際:症例に学ぶ、在宅医療、ホスピスについて、尊厳死・安楽死・DNR、医療倫理が行われていた。

大学例7:
4年次における緩和ケア全般についての集中講義が行われていた。
内容は、A心に残った方々、Bターミナルにみられる精神的諸問題と対応、Cターミナルに見られる身体的諸問題と対応、Dホスピスの全人的理解・全人的ケアー キリスト教の立場から、E生死判定基準、F死亡に関する法医学的諸問題。

大学例8:
1年次:総合講座(病と死の人間学)において、病みつつ生きるということ(癌の終末期において)、癌患者さんとの日々から学ぶこと、いのちみつめて、死生学、現代における死への問い、他者の言葉―生と死をつなぐもの、日本人の死生観、終末期医療―医師の立場から、
3,4年次:消化器病学(消化器外科)において、終末期治療、
5年次:臨床実習(緩和医療・ターミナルケア)において、緩和ケア医学の理念と実際、疼痛コントロールの方法、その他(呼吸困難、全身倦怠感など)の症状コントロール、介護の実際や音楽療法などへの参加、
6年次:CM-I(患者の人権、医の倫理)において、医の倫理と医師の義務、基本的人権、患者の権利と自己決定権、インフォームド・コンセント、末期患者への対応、身体的・精神的・社会的苦痛の除去、対症療法、ホスピス、尊厳死、リビングウィル、ターミナルケアが行われていた。

大学例9:
3年前期:医療科学IIIでターミナルケア1)~5)、医療と倫理1)~5)、
3年後期:患者のQOL1)~5)、インフォームド・コンセントについて1)~4)、
4年後期:精神科学でリエゾン精神医学、麻酔科学で癌性疼痛、緩和医療、
5年:麻酔科学で緩和医療、緩和外来、
6年:公衆衛生学で医の倫理と国際保健。総合医療学で医師・患者関係(インフォームド・コンセント、末期医療)、麻酔科学で癌性疼痛が行われていた。

ホスピス・緩和ケア教育カリキュラム(多職種用):
全国ホスピス緩和ケア病棟連絡協議会ではホスピス・緩和ケアの定義、ホスピス・緩和ケアスタッフの資質と態度について触れ、一般目標、行動目標が示された(表2)。行動目標の疼痛マネジメント、症状マネジメントについては態度、技術、知識の細目にわたり目標が示されている。
表2:ホスピス・緩和ケア教育カリキュラム
◆一般目標
良質なホスピス・緩和ケアを提供できるように知識、技術。態度を身につける。
それに基づいてホスピス・緩和ケアを実践し、啓発することができる。

◆行動目標
 1. 疼痛マネジメントができる
 2. 症状マネジメントができる
 3. 心理社会的側面を理解し、援助できる
 4. 霊的側面を理解し援助できる
 5. 倫理的側面を理解し援助できる
 6. チーム医療を側面を理解し援助できる
 7. 行政・法的問題を理解し援助できる

パリアティブ・ケアにおける教育
(英国上院、医学倫理に関する特別委員会レポート、1994年):
医師、正看護士(登録看護婦)、ソシアルワーカー、作業療法士、理学療法士、薬剤師および授任聖職者の卒後基礎教育を重視し、かつ卒前教育の重要性を認め教育者のために書かれている。内容はパリアティブ全般に渡っているが、教育については、緩和ケアの全体像を示す事の難しさが学生の理解度を妨げていると指摘し、更に試験で理解度を評価する事の難しさを挙げている。緩和医療教育は異なる専門分野の知識を活用しなければならない分野であり、スタッフの構成の難しさより学問分野として確立されていないとも述べている。教育年次については基礎トレーニング期間中に触れ、ポスト基礎学習年に正式に教えられる事が望ましいと述べ、教育担当者については専門的知識・知見を持った臨床医と倫理学者で分担される事がよいと述べている。教育法については参加型の講義、ディべート、セミナー、シミュレーション、枠組みのある討論、ワークショップ、ロールプレーイング、自分で主題を選ぶ自習を挙げている。

ホスピス・緩和ケア病棟看護婦教育プログラム:
西オーストラリア、パースのCottage Hospiceの教育プログラムを参考にピースハウスホスピスにより作成され、[1]病態生理/症状マネジメント、[2]患者と家族に対するケア、[3]対人コミュニケーション、[4]ホスピス・緩和ケアの4項目で構成されている。


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