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(2011年7月1日~)
ホスピス・緩和ケアに関する調査研究報告
2002年度調査研究報告


■がん患者のリンパ浮腫に対する臨床的手技の確立と普及に関する研究
 ―臨床におけるリンパ浮腫に対するケアの実態調査―
 国立がんセンター東病院緩和ケア病棟看護師長
 吉田 扶美代


1. 研究の主旨

 終末期患者におけるリンパ浮腫のケアにおいて、次のような問題がある。その問題点は、[1]看護師・医師のケアについての知識・認識不足、[2]使用できるスリーブ、圧迫包帯類の不足、[3]ケアに関わる専門的人材の不足である。がん看護において、リンパ浮腫のケアは専門的なケアとして今後位置づける必要がある。リンパ浮腫に関する知識を得ること、ケアの技術を身につけること、ケアに必要なスリーブや圧迫包帯などのケア用品を揃えることなどは急務の課題である。
 そこで今回は、わが国における終末期がん患者のリンパ浮腫のケアの実態を以下の3つの視点から明らかにする。

[1] 終末期がん患者のリンパ浮腫にホスピス・緩和ケア病棟でどのようなケアが提供されているのか
[2] 終末期がん患者のリンパ浮腫に現状ではどのようなケアができるのか
[3] 入手可能なリンパ浮腫のケア用品は何か


 本研究は、以上の3つの視点から、終末期がん患者のリンパ浮種の臨床的手技の確立と普及を目的として行われる。

2. わが国における終末期がん患者のリンパ浮腫に対するケアの実態調査

1. 調査目的

 リンパ浮腫のケアの現状と問題点について明らかにする。

2. 調査内容

対象 全国ホスピス・緩和ケア病棟A会員施設104施設における看護師長104名。
方法 郵送による質問紙調査
調査期間 平成2002年7月6日~9月30日
調査項目 リンパ浮腫を有する患者数、リンパ浮腫のケア経験の有無、ケア方法、ケアに費やす時間、費用の請求、ケア技術の修得の方法、ケア上の問題点について調査した。
倫理的配慮 研究の趣旨を理解し協力の得られた施設とし、回答により施設が特定できないこと。  得られた結果は、本研究の目的以外に使用しないこと。

3. 調査結果

回収率 91施設(88%)
有効回答率 89施設(86%)
アンケートの設問とその結果は、表1参照
6ヶ月間の入院患者では、50名以上が35施設(40%)、10人以下が19施設(22%)、40~50名が9施設(10%)の順であった。

1) リンパ浮腫のケアは、99%の施設でおこなわれており(図1)、そのうち97%の施設で困っている状況にある。(図2)  困っているところは、知識・技術の不足、ケアに十分な時間がとれない、使用できる物品がない等が多かった。(図3)
2) ケアの方法として、徒手リンパドレナージと間歇的空気式圧迫ポンプの実施が行われている。チュービコット、弾性包帯の使用は44施設(49%)、ストッキング、スリーブの使用は24施設(27%)であった。その他に、足浴、アルブミンの使用等もあった。(図4)
3) ケアをしている人は、全施設の看護師が関わっており、理学療法士は17施設であった。その他には、アロマセラピスト、家族、ボランティア、鍼灸師等が関わっていた。(図5)
4) コスト請求については、物品のコスト請求はしていないところが66施設(75%)であるが、ストッキングやスリーブ等の個人専用のものは、自己負担としている。使用物品にはアロマオイルも含まれていた。
5) 外来における月平均の外来患者数は、10人以内が42施設(48%)、全くなしも36施設(41%)であった。
6) 外来でのケアについては、何もしていないが14施設(16%)、徒手リンパドレナージが24施設(27%)、間歇的空気式圧迫ポンプが14施設(16%)、次いでスリーブ、ストッキングの装着、弾性包帯、チュービコットの使用であった。
7) コストの請求は、理学療法士が行った時は請求している施設が4施設、請求していない施設が35施設(40%)であった。
8) リンパ浮腫のケアに関する教育を受けているかということについては、研修や講習を受けた看護師は32施設にいたが、研修・講習の機関を調査すると、ホスピスケア研究会が最も多く、後藤学園リンパ浮腫治療研修会が3施設であった。(図6)
9) 自由記述では、終末期のがん患者のリンパ浮腫への対応は、進行が早く、ケアできないし、方法も難しい、わからない、使用する物品が高く簡単に使用できない、知識不足で研修を希望するという意見が多かった。







4. 考察

 それぞれの施設にリンパ浮腫の患者は多くいるが、適切な対応はほとんどされていない。それは、誰が対応しているかという設問で、家族やボランティア、アロマセラピスト、マッサージ師、鍼灸師などという回答やアロマオイルを使用しているという回答からリンパ浮腫に対する適切な対応がなされていないと考えられる。
 外来患者については、把握できていない状況と考えられる。これは、今回、病棟勤務の看護師長に回答を求めたことが原因と考えられる。また、外来では、ケアに30分以上かかっているという回答が12施設、10~30分が、16施設で限られた時間、人で行う現状では継続してリンパ浮腫のある患者全員に対応することは困難だと考える。
 コスト請求もストッキングやスリーブのみ患者負担とし、弾性包帯、リンパ浮腫用の圧迫包帯等は、病院の負担となっているが、ケアが確立されていない現状では、診療点数に反映させるのは難しいだろう。
多くの看護師が、リンパ浮腫に対する知識、技術を身につけたいと考えており、そのための研修、教材を望んでいることが明らかになった。
 研修、講習を受けているという看護師の多くは、1~2日間の講演、講義に参加しているのみで、スペシャリスト教育を受けていないという現状にある。



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