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(2011年7月1日~)
ホスピス・緩和ケアに関する調査研究報告
2001年度調査研究報告


■大学病院の医学部・看護学部における緩和ケア教育の現状調査と提言<5P>

6. 考察

 医学部、看護学部共1コマ以上の講義施行率は急激に増加している。武田らの1998年に行った医学教育機関、看護教育機関を対象とした調査では医学教育機関の93%、看護教育機関の95%に緩和ケア教育が実施されており(文献2)、今回の2001年度統計結果も同様の結果を見た。

 講義の名称を見ると、医学部・看護学部共1995年度はターミナルケアが主体で他、疼痛治療、末期医療、終末期医療、疼痛緩和対策、死の臨床であったが、2001年度では緩和医療、医学概論、看護学概論他が加わるようになった。1996年に緩和医療学会が発足し緩和医療(ケア)という概念が提唱され定着してきた結果と思われる。

 講義実施学年は、医学部では1995年度では6年が一番多く,次いで1年,4年の順だったが,2001年度では4年が一番多く、次いで6年、5年、1年だった。4年次は臨床実習が始まる前の学年であり、臨床実習を踏まえた講義設定と思われる。看護学部では看護大学4年を除外すると年次による偏りはなかった。

 講義のコマ数は過去との比較ができないが2001年度のみを見ると7コマ以上は医学部では24%、看護学部では45%で、6コマ以下が半数を占めていた。武田らの調査でも看護学部の方がコマ数が多くとられていた(文献2)

 講義担当教官は、医学部では1995年度より麻酔科、内科、外科が中心であるが、2001年度より精神科、放射線科を中心とした各科の担当が見られるようになってきた。看護学部では1995年度は麻酔科が中心で内科、外科、成人看護の順だったが、2001年度は看護科教員が50%以上を占め、麻酔科、内科、外科、他と変化している。癌看護の領域でスタッフが育成され教員が充足してきた結果と思われる。

 講義の内容は、医学部では1995年度が末期医療・ホスピスケア、疼痛緩和、生と死、倫理・告知・臓器移植と総論的であったのに対して2001年度では疼痛緩和、インフォームド・コンセント、ホスピス、がん告知、症状緩和、チーム医療、家族のケアと各論的になってきた。看護学部も同様であり、1995年度は末期医療・ホスピスケア、ターミナルケア、疼痛緩和、生と死、倫理・告知・臓器移植と総論的であったのに対し、2001年度では疼痛緩和、家族のケア、ホスピス、がん告知、インフォームド・コンセント、症状緩和、チーム医療、スピリチュアルケアなど各論的になってきた。

 講義方法は、2001年度のみの結果だが、医学部・看護学部とも講義が主体であるが、医学部では事例検討、実習、グループワーク、ロールプレイ・ビデオ学習などが取り入れられていた。看護学部ではビデオ学習、グループワークが特徴的であり、この他事例検討、実習が見られた。

 卒前緩和ケア教育については各大学医学部・医科大学、看護大学・看護学校で取り組まれるようになってきており、看護学部ではコマ数・専門担当教員ともに医学部を上回っている。医学部でも取り組みの姿勢が見えるが、講義コマ数を見ても十分とは言い難い。コマ数では医学部を上回る看護学部についても系統講義の確立、教科書の整備については今回のアンケートではつかめず、今後の調査が必要と思われる。看護教育の場における教科書の内容調査は米国で行われており、この調査では緩和ケアに対する記述の少なさが指摘されている(文献3)。 緩和ケア教育に対しては、カリキュラムの構築ばかりでなく教科書の充足も考えていかねばならない。他国を見ると臨床医に対する緩和ケア教育の重要性が提唱され、現場のスタッフもより高いスキルを要求しており、学生の緩和ケアに対する高い関心も指摘されているが、この分野での系統講義は確立されておらず、卒前の体制は十分とは言い難い(文献4、5、6、7、8) 【表3 ホスピス・緩和ケア教育カリキュラム】
(全国ホスピス緩和ケア病棟連絡協議会)
《一般目標》
良質なホスピス・緩和ケアを提供できるように知識、技術、態度を身につける。
それにもとづいてホスピス・緩和ケアを実践し、啓発することができる。
《行動目標》
 1.疼痛マネジメントができる
 2.症状マネジメントができる
 3.心理社会的側面を理解し、助演できる
 4.霊的側面を理解し、援助できる
 5.倫理的側面を理解し、援助できる
 6.チーム医療を理解し、援助できる
 7.行政、法的問題を理解し、援助できる
カリキュラム構築に際しては、概念・知識の獲得を目指すばかりでなく、緩和医療(ケア)を実践しているホスピス、緩和ケア病棟よりの種々の提言(文献12)。大学病院の緩和ケアを考える会では、卒前緩和ケア教育に求められるものを1)患者中心の全人的医療、2)全人的な痛みを理解し様々な痛みに対処する(身体的痛みに対する除痛・その他の症状緩和)、3)コミュニケーションスキルを修得する(インフォームド・コンセント)、4)チーム医療、5)患者・家族のケアの5項目とし、卒前緩和ケア教育のカリキュラムを次のように提言した。

《一般目標

 良質な緩和ケアを提供できるように、全人的医療に基づいた知識・態度・技術を修得する
《行動目標》
 1 全人的苦痛を理解し、説明できる
 2 疼痛マネジメントを含めた症状緩和法を説明できる
 3 患者・家族へのインフォームド・コンセントの必要性とその方法を説明できる
 4 チーム医療のあり方とその必要性を説明できる
 5 生命倫理的問題を理解し、説明できる

 実際の講義方法については様々な試みがあり、小テストやレポート作成による自主学習の活性化(文献13)やグループワーク、ロールプレイングなどの学生参加型講義が行われている。また、ホスピス、緩和ケア病棟における体験実習や患者家族を通しての体験実習も行われている(文献14、15、16、17)。この他ビデオ学習も多用されており、ウェブの使用による教育法も提唱されている(文献18)。講義方法については各機関の取り組みが待たれる。カリキュラムについては各大学がそれぞれの特色を出し実行することが一般的であるが、日本の実情では統括する指針があると普及しやすいという特徴がある。今後各研究機関の協力による統一した指針の作成が望まれる。当報告が一助になることを願う。
 

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