新型コロナウイルスに罹患された方々、またコロナ禍により生活面等で困難な中におられる方々へ、
心よりお見舞い申し上げます。 また感染症対策に尽力いただいている保健、医療従事者の方々へ心より感謝申し上げます。 ホスピス財団 理事長 柏木 哲夫
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今月のコラム |
ホスピス財団
理事・事務局長 大谷 正身
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古典に見る日本人の死
当財団にN県に住む高校生から安楽死に関しての質問が寄せられ、その中で「そもそもなぜ“死”というものがそこまでタブー視されているのか」とあった。これに対して、ひとつには、自宅死が激減し、病院死が増えることにより、死が日常ではなくなったこと、また医療の世界では一日でも命を長くすることがよしとされ、死を避けたいという思いがあることを挙げて説明した。 このことに関係して思い起こすのは、昨年12月に開催された第43回日本死の臨床研究会での市民公開講座「死と共存する笑いの世界~落語ではいつも誰かが死んでいる~」と題した落語であった。三遊亭遊楽師匠が巧みな口調で死にまつわる話をいくつも出されたがそこには死をタブー視するという風潮は一切見られなく、死が自然なこととして受け入れられているのであった。*1 古来より日本人は、決して死をタブー視、言葉を換えれば忌み嫌うものとしていなかったのではと思わされるのである。 作家、堀辰雄の「黒髪山」*2という小品には古代の日本人の死生観が表れているので、紹介したい。堀氏は、源氏物語の總角(あげまき)」卷で、長患ひのために伏していた宇治の姫君が愛人の薫の君にみとられながら、遂に息を引きるのであるが、そのとき薫の君が若く美しい女の、そのかき乱れた髮の毛だけがまだ生きているときと同じやうに匂うことで故人を慈しむ姿を表現されているが、私はそれを読んで、その光景は死を忌嫌っているのとは異なり、哀感の伴った看取りであったと思うのである。 さらに堀氏は、時代を遡り万葉集の次の歌を掲げている。 “秋山に黄葉(もみぢ)あはれとうらぶれて入りにし妹は待てど来まさぬ” 堀氏のコメントをそのまま以下に引用する。(下線が引用箇所) 山に葬られた自分の妻を、恰も彼女自身が秋山の黄葉のあまりの美しさに憑かれたやうにして自ら分け入つてしまつたきり、道に迷つてもう再びと歸つて來ないやうに自分も信じてをるがごとくに歎いて、以つて死者に對する一篇のレクヰエムとしたのかも知れない。 万葉集で黄葉(もみじ)と書かれているのは、黄泉(よみ)の世界があらわされていると多くの学者が説いている通り、万葉人は、人は死して黄泉の世界へ下るという死生観でありここからも、死はタブー視されているのではなく、死に対しての畏怖の念を抱いていたと思わされるのである。 ホスピス・緩和ケアの領域においては、死は忌み嫌うものではなく、誰にも避けられない現実として十分に理解されているが、同様にすべての医療従事者、一般の方々が、死は古来より日本人の意識にある畏怖すべきものであると認識されることを願うものである。 *1 ホスピス財団ニュース https://www.hospat.org/assets/templates/hospat/pdf/foundation_news/vol-42.pdf *2 堀辰雄 黒髪山 https://www.satokazzz.com/airzoshi/reader.php?action=aozora&id=47907 |
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ホスピス財団第5回国際セミナーが開催されます | |||
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『Whole Person Care 教育編』が好評発売中です | |||
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第7回 WPC 読書会のご案内 | |||
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ホスピス・緩和ケア白書2022が発行されました | |||
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2023年度調査・研究助成の公募を以下の通り案内いたします | |
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「誰かのために生きてこそ」・・・ 人生が好転する「利他の精神」 | |||
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ホスピス・緩和ケアに関する新聞記事の紹介 | |||
(記事のコピー等をご希望の方はホスピス財団事務局へご連絡ください。) | |||
・消えない悲しみと向き合いながら・・・関西学院大学「悲嘆と死別の研究センター長 坂口幸弘教授に聞く つらい中にも「せめてもの救い」を得るという肯定的評価で心残りを和らがせるなど、悲嘆と死別に苦しむ人々へのアドバイスを語られたインタビュー記事。「増補版 悲嘆学入門」では新型コロナやジェンダーについても新たに言及されている。 (毎日新聞 2022/08/04 掲載) http://www.showado-kyoto.jp/book/b603781.html |
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・こどもホスピス ・・・笑顔守りたい 小児がんや難病のこどもたちが穏やかにすごす淀川キリスト教病院の「こどもホスピス」が10周年を迎えた。その内容をひとりの少年の記録を通して紹介された記事。 (読売新聞 2022/08/01 夕刊掲載) |
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・滝野隆浩の掃苔記 がん緩和ケア「大転換」 厚労省が6月8日に発信した「がんの緩和ケアに関する資材の周知について」を解説したコラムで、診断時からの緩和ケアの徹底に加え、疼痛緩和に対しては高い鎮静効果のある「神経ブロック」や放射線治療を使用することを推奨している。 (毎日新聞 2022/07/31 掲載) 厚生労働省健康局がん・疾病対策課 事務連絡 2022.6.8 https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/178388/20220608_kanwacare.pdf |
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・がん死別など、遺族ケアの指針「遺族ケアガイドライン」 全国で遺族、家族外来が設置されている医療機関はとても少なく、50に満たない。一方でがん患者の家族は「第二の患者」と言われるほどに悩みも多く、適切なケアが必要である。本書は一般の方にも関心を持ってほしいと」国立がん研究センターの松岡弘道医師は語っている。 (毎日新聞 2022/07/27 掲載) https://www.kanehara-shuppan.co.jp/books/detail.html?isbn=9784307102179 |
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・コロナ下の「ケアの現場」 コロナ下では、がん患者も自宅療養を希望するケースが多くなっている。病院では家族とも面会ができないなどが理由である。コロナ禍は残りの人生を誰と、どこで生きるかを改めて問い直す機会となっていると、在宅医療専門医の中村明澄医師は語る。また、小さな子どもの世話や、出産する女性もコロナ禍で孤立感を強めている女性が多くなっていると「ホームスタート・ジャパン」代表の森田圭子氏は警鐘を鳴らしている。森田氏はそのような女性への支援活動を続けておられる。 (毎日新聞 2022/07/27 掲載) |
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・認知症ケア ・・・孤独の理解から 日本の認知症高齢者が600万人を超え、2025年には700万人まで増える中、大阪大学名誉教授、佐藤眞一先生(ホスピス財団理事、事業委員を兼任)は、支える側の態度の大切さが必要と訴える。「怒らない」「否定しない」「共感する」が認知症の方とのコミュニケーションの基本だと話されている。 (読売新聞 2022/07/03 掲載) |
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