一般情報
ホスピス・緩和ケア
従事者への情報
財団紹介
財団へのアクセス
事業活動について

訪問者数 :
昨日 :
本日 :
(2011年7月1日~)
ホスピス・緩和ケアに関する調査研究報告
2005年度調査研究報告


■リバプール・ケア・パスウェイ(LCP)日本語版の作成と評価に関する研究
 日本赤十字社医療センター副部長 
 茅根 義和

I調査・研究の目的・方法
【目的】
日本語版LCPの作成。
【方法】
Liverpool Care Pathway(LCP)はDr Jhon Ellershawが2003年に発表したチェックリスト形式の本格的な「看取りのプロセス」の記録様式である。Pathwayという名がついているが、いわゆるクリニカル・パスよりは、看取り前後の時期に医療者が確認しておくべき事項をまとめたチェックリストに近い。LCP自体は数頁にまとめられており、看取り前、臨終時、見取り後の時期に行うべき事がまとめられている。これまで様々なホスピス・緩和ケアのマニュアルが作成されているが、看取りのプロセスを明確化し、プロセスの指標となる記録様式は未だ開発されていない。そのため、エビデンスに基づき、かつ死への過程に沿った枠組みを提示するLCPは、看取りに至るケアの質を向上させる重要なツールとなると考えられる。しかし、イギリスと日本との文化的背景、ホスピス・緩和ケアを取り巻く環境の違いがあるため、英国で開発されたLCPをそのまま導入する事は困難である。そこで、単なる日本語訳を作るのではなくではなく、LCPを日本の医療環境、ホスピス・緩和ケアの環境に適した内容にするために研究者の間で十分な討議、検討を加えて日本語版のLCPを作成する事とした。研究組織は、他職種からなるワーキング・グループ(以下WG)および看取りのプロセスに関する専門家からなるアドバイザリー・ボード(以下AB)により構成する事とした。一年目において、著作者による非英語圏への普及プログラム(The LCP Central Teamにより運営)に登録し、同プログラムにそって研究を行うこととした。
以上、1年目よりの本研究の骨子である。本研究2年目の課題はLCPの翻訳および日本語版LCPの作成である。
LCPの翻訳および日本語版LCPの作成は、EORTC guidelinesに沿って行った。作業はWGを中心にABの助言を得つつ行い、LCP(ホスピタルバージョン)の日本語版を作成した後、その日本語版を英語に再翻訳して著作者の承認を得る手順で行った。
II調査・研究の内容・実施経過
本年度の研究内容は以下の通りである。
昨年度より引き続きの作業であったLCPの翻訳はEORTC guidelinesに沿って添付資料1:LCP日本語版の開発過程の手順に従って行い、日本語版LCP(ホスピタルバージョン)第一版(添付資料2)を完成させた。
順翻訳は森田達也(聖隷三方原病院)と茅根義和(日本赤十字社医療センター)がそれぞれ独立して行った。
順翻訳1,2の相違点を元に、オリジナルから翻訳作業を行う過程は2005年7月2日および7月9日でのWGを中心とした会合で大枠を決め、その後はMLを通じて修正を行った。7月2日、9日の会合では順翻訳と原文とを照らし合わせ、セクションごとに逐語検討を行い、日本語の確定を行った。この段階で日本の医療事情に適合しない部分については一部原文の内容を削除することも決定した。(目標15、16部分)主に医療用語の解釈の面で確定出来なかったいくつかの項目についてはMLを用いて更なる検討を行い、最終的に事務局にて日本語版の確定を行った。
完成した日本語版を2名のnative English speakersによって英語へ再翻訳し、訳の異なった部分について日本語の修正および再翻訳の作業を行った。
この過程を経て作成した再翻訳はThe LCP Central Teamへ送達され、現在承認を待っている。 2006年2月18日に最終の会合を持ち、日本語版LCP(ホスピタルバージョン)の最終確認を行った。同時にLCPに添付する症状コントロールマニュアル、各種パンフレット(病院施設案内、悲嘆のパンフレット)の扱いについて決定した。(添付資料3)
この作業と並行してThe LCP Central Teamが求めている10ステッププログラムにおけるStep 3:basic reviewを、登録施設である聖隷三方原病院(担当者:森田達也)および日本赤十字社医療センター(担当者:茅根義和)で各20症例行い、The LCP Central Teamへ送達した。これに対しての分析結果(添付資料4、5)が回答された。この結果は今後のLCP適用後の20症例についてのreview(The LCP Central Teamより求められている調査)と併せて妥当性の評価において使用する基礎資料となる。
III調査・研究の成果
1)日本語版LCP(ホスピタルバージョン)を作成した
2)今後の妥当性の評価の基礎資料となるbasic reviewが終了し、The LCP Central Teamによる解析結果がえられた。
IV今後の課題
日本語版LCPに添付する症状コントロールマニュアル、悲嘆のパンフレットの整備が今後必要である。
2006年1月にLCPの第二版が発表された。基本的構成は第一版に準じているが、若干の変更点がみられる。本研究では第一版の日本語版を作成したが、今後第一版の普及とともに日本語版LCPの改版についても検討が必要である。
同時にThe LCP Central TeamよりLCPの非英語圏への普及プログラムの大幅な変更が送達された(添付資料6)。現在新しいプログラムのPhase1が終了した段階である。今後、完成した日本語版LCP(ホスピタルバージョン)を登録施設において適用し、適用後の調査及びThe LCP Central Teamによる分析とbase reviewとの比較を行う必要がある。(Phase 2、3)
同時に今後の普及、教育についてのプログラムを作成し、実際の普及、教育を進めていくこと(Phase 4、5)も今後の課題である。
V調査・研究の成果等公表予定
日本語版LCP(ホスピタルバージョン)の開発過程について第11回緩和医療学会総会にて発表を計画している。






添付資料2(表紙のみ掲載)

添付資料6 International Information Pack 最新版