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ホスピス・緩和ケアに関する調査研究報告
2003年度調査研究報告


■がん患者のリンパ浮腫に対する臨床的手技の確立と普及に関する研究
 ―進行がん患者へのケアの有効性の評価―
 国立がんセンター東病院緩和ケア病棟看護師長
 吉田 扶美代

研究の主旨
昨年よりがん患者のリンパ浮腫のケアの確立を目的として研究に取り組んできた。昨年は、わが国における終末期がん患者のリンパ浮腫に対するケアの実態調査、事例報告、わが国におけるケア用品に関する調査について報告した。
その結果、リンパ浮腫に対するケアのガイドラインの確立、スペシャリストの育成、ケア用品の開発等いくつかの課題が明らかになった。
そこで、本年度は、①進行がん患者のリンパ浮腫のケアの有効性を評価する。②臨床実践からケアのガイドラインの骨子を抽出することを目的として研究に取り組んだ。

I 進行がん患者のリンパ浮腫のケアの有効性
1.研究の背景
一般にリンパ浮腫のケアの目標は、浮腫を減少させ維持すること、浮腫によるADLの低下を起さないこと、浮腫の部位に感染や炎症を起こさないことである。浮腫の悪化により皮膚の角質化、線維化、乾燥、脆弱等の変化が現れ、外傷や蜂窩織炎に代表される感染・炎症のリスクが高まる。それらの感染・炎症は患者に苦痛を与えるのみならず、適切に対処されなければ生命を脅かすことになり、リンパ浮腫のケアにあたっては感染や炎症を予防することが肝要である。リンパ浮腫のケアは複合理学療法(Complex decongestive physical therapy以下CDPという。CDPの内容は①スキンケア②リンパドレナージ③圧迫療法④運動療法⑤生活指導である。)を基本とするが、進行がんの患者においては、標準的なCDPを実施できないという問題がしばしば発生する。
さらに、進行がん患者に対するリンパ浮腫のケアのエビデンスもないことから、臨床での実践からケアの有効性を評価することは、緩和ケアの質的向上に貢献できると考え、本研究に取り組んだ。

2.研究目的
対象者に、感染・炎症をおこさず、浮腫による苦痛が緩和されることを目標として、CDPを実施し、進行がん患者のリンパ浮腫へのケアの有効性を明らかにすることを目的とする。

3.研究方法
対象者 国立がんセンター東病院外来および入院患者31名
 男性14名、女性17名、平均年齢は59歳(37~85歳)
期間 2003年1月1日~11月30日
方法 リンパ浮腫のある入院患者・外来患者に対して、CDPによるケアを実施し、それを経時的に記録し、リンパ浮腫に関するケアの有効性を評価する。
リンパ浮腫の査定およびケアの評価は、アセスメントフローチャートを使用する。ケアに当たる看護師は本研究メンバーでもある緩和ケア病棟の看護師3名に限定した。

倫理的配慮
研究の主旨を口頭で説明し、同意の得られた患者を対象とした。ケアの有効性を評価するために、リンパ浮腫になっている部位の写真や計測等のデータも必要であり、それらについては、個人を特定できないようにすること、計測個所及びその頻度を最小限にすること、得られたデータは本研究以外に用いないことを説明し患者の承諾を得た。また、主旨の説明においては、同意をしない場合においても患者が受ける診療及び看護に影響を及ぼさないことを保証した。

4.研究結果
(1)対象患者の背景
腫瘍の原発巣は(多重がんを含む)、乳腺6名、頭頚部6名、胃5名、大腸8名、その他12名であった。
転移部位で最も多かったのはリンパ節で65%の患者に転移が確認された。
また、病期は、IV期が27名(88%)であった。
症状は、疼痛が32% 呼吸困難33%、全身倦怠感が9%であり、使用薬剤としては、非ステロイド鎮痛薬、強オピオイド、コルチコステロイドの順に多く使用されていた。
ケア開始時の状況は、通院患者が22名であった。浮腫への対処は、実施していた人が4名、してなかった人が27名であった。前述の4名においても、スペシャリストのケアを受けているものではなかった。
浮腫の発生部位は、下肢20名、上肢15名、顔面4名、陰部2名の順であった。(図1)
グレーディングスケールによる浮腫の程度は、グレード0が1名、グレード1が2名、グレード2が18名、グレード3が7名、不明が3名であった。尚、頭頚部の浮腫は、舌や顔面、頚部に現れるため、グレードの評価が困難であり不明とした。(表1参照)

         図1 浮腫の発生部位(対象によって発生部位が重複する)

 

                 表1 対象者の背景


(2)ケアの実際
看護師が介入可能かどうかと判断した基準は、浮腫以外の症状マネジメントができていること、患者自身にケアへの欲求があること、ケアへの協力者がいること、外来患者においてはPSがよく通院が可能であること、生命予後の見通しが月単位以上あることとした。不可能とした判断理由は、生命予後の見通しが短く病状の変化が予測され、介入できる時間がない場合、浮腫よりも優先すべき症状マネジメントの問題を抱えている場合には、入院患者であっても対象から除外した。
患者の内訳は、通院患者17名、通院から入院へと移行した患者5名、入院患者9名、である。(図2参照)
実施したことについては次の通りである。
CDPの実施状況は、スキンケアと生活指導は対象となった全ての患者に行っているが、リンパドレナージ23名、圧迫療法21名、運動療法19名であった。(表2参照)
本研究においては対象が少なく、CDPの有効性を量的に評価することは困難であり、CDPを構成する其々のケアがどのように実施され、どのような効果が得られたかという視点で有効性を評価することとした。

           

    図2 CDPの介入場所           表2 CDP実施状況


①スキンケア
スキンケアは対象となった31名全員に実施している。
初診時に乾燥した皮膚となっていた6名には、改善が認められた。(表3参照)
線維化したリンパ浮腫の患者の8名うち、1名に感染・炎症が現れた。その場合でも抗生物質の与薬を受けながら、スキンケアを継続した結果、感染・炎症は消失した。
リンパ漏を生じた2名には、清潔なガーゼによる保護と多層圧迫包帯法を行い、浮腫の軽減とともにリンパ漏の消失が認められたもの1名、悪化はしないものの改善の見られないもの1名であった。
スキントラブル(乾燥、感染・炎症、リンパ漏)のあった7名(9事例)は、ケアを実施したことで改善が図られた。初診時よりスキントラブルのなかった24名は、スキンケアの継続により正常な皮膚の状態を維持できた。

②リンパドレナージ(MLD・SLD)
リンパドレナージは23名に実施され、8名は対象とならなかった。
実施できなかった理由は、触れることにより痛みが増強するが1名、全身状態が悪化したが7名であった。
実施した23名うち、SLDのみの患者0名、MLDのみの患者15名、MLD+SLDの患者  8名となっている。(図3参照)
SLDを実施していた患者は、通院患者4名または入院患者4名であった。
どのような患者が実施していたかという点については、リンパドレナージの必要性を理解し手技を習得していることを前提として、ケアの協力者がいること、リンパ浮腫が生活へ及ぼす影響が深刻である、個人の自立度が高いという特徴がみられた。
その反面、リンパ浮腫があっても生活上支障がないと感じている、患部を見られたくない、ケアへの協力者が得られない場合は、SLDの指導をしても実施されていなかった。
MLDはリンパドレナージの対象となった23名全員に実施した。頭頚部のリンパ浮腫にはMLD実施直後から外見からも確認できるほどに著しい効果が、対象となった3名に現れた。
頭頚部以外の部位では、皮膚の張り詰めた状態が柔らかくなった患者10名、「気持ちがいい」、「流れている感じがする」という言葉が聴かれた患者13名であった。(表4参照)

③圧迫療法
31名中21名の患者に施行された。
初診時に多層包帯法のみを実施した患者4名、圧迫衣類18名であった。(図4参照)
多層包帯法を用いることができた患者は、入院患者であった。手技が複雑な多層包帯法を通院患者が行うためには協力者が必要であり、協力者にも手技を習得するために通院してもらうとなると、実際にこの方法を行えたのは非常に限られた患者であった。
多層包帯法では浮腫が改善したのは2名であった。(図5参照)
圧迫衣類により浮腫が減少した患者は6名であった。圧迫衣類を使用した18名中9名は、リンパ浮腫専用の平編みの製品ではなく静脈瘤などに使用される丸編みの製品であった。浮腫の減少の有無に関わらず、圧迫衣類使用者から上肢、下肢ともに「つけていると軽い感じがする」との感想があり、下肢では圧迫衣類を使用すると「下肢の重さが楽になって動きやすいから、同じ動作でも無理なくできる」と活動範囲が広がった患者もいた。圧迫衣類は、すべてに既製品を使用していた。カスタムメイドが望ましい患者もいたが、高額であることやオーダーする前に病状が悪化した等の理由により適用できなかった。
チュービコットは、リンパ浮腫のケア用品として作られたものではないが、圧迫衣類の着脱が困難なために圧迫衣類が適用できず、かといって多層包帯法も実施できないような通院患者や、ケアを必要としているが全身状態が悪く強い圧迫を加えられないという入院患者に使用した。体形にフィットした段階式の圧力が掛けられないために、浮腫の部位に皺や凹凸が生じるという問題が発生した。この問題に対しては、サイズの異なるものをいくつか組み合わせて使用するようにした。肘関節や膝関節などの関節を接続の部分としてチュービコットを重ね合わせることで、問題に対処できた。また、触れることが痛みを増強させる神経因性疼痛の患者には、チュービコットの緩やかな圧迫が適している場合もあることを経験した。

④運動療法
運動療法ができた患者19名、病状を考慮し運動療法を見合わせた患者が22名であった。
標準的な運動療法が可能だった2名以外は、個別的なプログラムを立案した。標準的な運動療法の中の屈伸運動のみを実施した事例8名、日常生活動作の範囲内にするなどの方法を指導したもの11名となっている。(図6参照)

⑤生活指導
生活指導では衣類、日常の生活動作、仕事、趣味に関することがほとんどであった。特に衣類に関しては、それまで使用していた下着が合わない物であっても、経済的な理由により新たな衣類に変更することが困難な患者もいた。

 

    

  表3 スキンケア結果                図3 リンパドレナージ    

 

  

  表4 MLDの効果

 

     

  図4 圧迫療法(初診時)         図5 圧迫療法における浮腫の減少数

 

  

  図6 運動療法の実際

 

5.考察
当施設では、リンパ浮腫のケアは2~3名の看護師が病棟業務の一環として行っているために、ケアを必要とする全ての患者に対応することは不可能であるが、わずかでも継続して関わることにより成果があるということを確認した。
(1)スキンケア
皮膚の保湿を保つことにより、悪液質に伴った皮膚の脆弱が認められても感染・炎症を予防することが可能であると考えられる。使用した白色ワセリン・流動パラフィン混合薬は保湿に勝れると同時に、アレルギー反応などを引き起こした症例はなく、安全に使用できる薬剤といえる。リンパ漏を生じても、清潔に保つことができれば感染・炎症を予防できることが示唆された。常に皮膚を観察することにより感染・炎症を早期に発見することができる。
(2)リンパドレナージ
リンパドレナージには、SLDとMLDが含まれるが、夫々について考察する。通院患者の場合にはSLDが主体となるが、ほとんど行われていなかった。その理由は、日常生活上の障害を感じていないために問題意識が希薄、体力がない、ケアの協力者が得られない、協力者が居ても患部を見られたくないために協力を求めなった等であった。背部、下肢ではケア協力者が必要であるが、実際は協力が得られない場合や独居であることが多く、また協力者がいても毎日継続することは在宅患者にとっては困難なことだという通院患者の実態がわかった。この問題に対しては、リンパ浮腫の病態とCDPなどのケアについて正しく理解できるような指導方法を検討する必要がある。リンパ浮腫という言葉を初めて耳にする患者も多く、そのような中でSLDに期待することは時期尚早と言っても過言ではなく、指導には時間と工夫を要するという認識が医療者には必要である。今後は指導用教材についても検討していきたい。
MLDは、通院、入院を問わず実施されていた。昨年の結果からも、タッチングによる心地よさは身体的苦痛だけでなく、精神的な安定にもつながっていることが明らかになった。しかし、神経因性疼痛のある患者にとってタッチングは、痛みを増強させる可能性があり、慎重に行わなければならない。今回関わる中で、神経因性疼痛のある患者であっても、タッチングに心地よさを感じる場合は、MLDの手技を状況に応じて使い分けることで、線維化や組織の硬さを軽減させる効果が確認された。リンパ液の還流を促進させて、線維化を改善できれば感染・炎症をも予防できる可能性が高まり、QOLを維持・向上させる。リンパ浮腫のある部位にがん性疼痛がある場合でも、状況に応じたかかわりをすることで患者の苦痛が緩和されることを始としてMLDの有効性が示された。
(3)圧迫療法
圧迫療法の中で、集中的にリンパ液の還流を高めるには多層包帯法が有効であると言われている。しかし毎日の巻き直しを必要とする多層包帯法を通院患者に行うことは困難である。手技の複雑さに加え、協力者がいない、セルフバンデージする体力がない等の理由により、進行がん患者にとっては現実的ではない。簡便な圧迫衣類であっても全身状態が整っていない患者では、着脱が難しい、浮腫が急性増悪するためにサイズの変更が度々必要となり経済的な問題も出現する。進行がん患者、特に終末期患者の場合には、リンパ浮腫専用であっても注文期間として2,3週間を要するカスタムメイドの平編みの製品を使用することは困難である。浮腫の軽減や生活動作を支援することを目的とするならば、数日で入手できる丸編みの圧迫衣類やチュービコットのような製品でも、患者のQOLを向上させることができる。軽い圧迫であるために浮腫そのものは増悪しても、圧迫に伴う苦痛が少なく、リンパ漏を予防できれば目的とする効果は得られる。弱い圧力のものを重ねることで、適正な圧を加えられることも応用できる。
(4)運動療法
リンパ浮腫の標準的な運動療法は歩行などのリズミカルな運動を20分間行うことが望ましいといわれている。しかし、進行がん患者では20分間の運動は、体力の消耗を助長させる場合も多く、指導されても取り組めないのが現実である。その点を配慮し、患者に指導する際に目安となりやすい運動量や時間を示すよりも「疲れない程度」などの曖昧な表現で指導せざるを得なかった。故に運動療法の実践者が少なくなった側面もあるが、進行がん患者の場合には、全身状態の評価、全身の症状マネジメントの状況を踏まえた上でより個別的プログラムを立案する必要がある。
(5)生活指導
衣類や日常動作は生活に密接に関わりをもつため、繰り返し説明指導することにより、患者によるセルフケアを可能にしたと考えられる。
また、進行がんであっても、在宅で過ごす患者が増加している社会現象を考慮して、リンパ浮腫をマネジメントするためには簡易的なCDPの開発が必要となる。例えば、体力の低下している患者が圧迫衣類や多層包帯法を行う場合に、できる限り自分で容易に着脱できるような衣類の工夫や看護者によるケア上の工夫も今後検討されるべき課題と考えられる。
本研究の対象となった患者は、病期IV期、リンパ浮腫のグレード3と深刻な病態にあったがCDPにより生命へ直結するような感染・炎症を回避できた。また、このような状態でもCDPを継続することで、浮腫を軽減させQOLを向上させられるということも明らかになった。今後は、その有効性を数量的に実証できるよう取り組みたい。

6.結論
(1)スキンケアは、あらゆる状況に適応となり、感染・炎症の早期発見や予防に有効である。患者の状態が変化し、スキンケア以外にできることがなくなった時においても、スキンケアを継続することで、「何かできることがある」、「関わってもらえる」という心理面への効果が期待できる。
(2)頭頚部のリンパ浮腫には、リンパドレナージが有効である。
(3)進行がん患者の場合には、対象の体力に合わせた運動療法を工夫する必要がある。
(4)進行がん患者のリンパ浮腫のケアにおいて、CDPは患者の症状や全身状態、ケアの協力者、経済状態を考慮した柔軟な対応により実施でき、効果を期待できる。
(佐々木智美、中辻香邦子、鑓水理恵子)

II リンパ浮腫ケアのガイドライン骨子の検討
研究Iで得られた結果を基に、ケアのガイドラインの骨子を検討した。
検討に当り、文献学習とリンパ浮腫のケアの病態からCDPの演習、圧迫衣類の計測演習等学習の機会をもった。
文献学習は、2003年に新たに出版された、2つの文献を用いた。
一冊は、「リンパ浮腫―適切なケアの知識と技術―」でイギリスの文献を翻訳したもの、他の一冊は「リンパ浮腫診療の実際」である。
いずれもリンパ浮腫の病態からケアまでが詳細に記述されているが、ベッドサイドケアのハンドブックとして使用するためには、目的に合わせてより簡便に情報が得られるようにすることやよりコンパクトにする必要性を感じた。
また、がんのリンパ浮腫の特殊性やケアの技術を修得するために、ドイツ人講師による研修を受講した。
このような準備の後にガイドラインの検討に着手した。臨床で浮腫のある患者に出会った時にどのような介入手順を踏めばよいかという疑問に答えられるガイドラインとなることを狙いとしている。
項目は、①観察 ②アセスメント ③マネジメントの方針 ④ケアの方法で構成されている。(別紙「がん患者のリンパ浮腫のケアガイドライン(案)」参照)
(丸口ミサエ)

III 今後の課題
臨床実践データを集積し、がん患者のリンパ浮腫のケアのあり方を追及することと、骨子を基に臨床で活用できるガイドラインの作成を次年度の課題とする。

IV 成果の公表
本研究の成果は、第19回日本がん看護学会学術集会での発表を予定している。リンパ浮腫のケアを認定看護師教育カリキュラムに取り入れられるようにもなり、教育時間も増えている状況にある。そのような教育の現場にも反映させたい。

共同研究者:丸口ミサエ(国立看護大学校)
      阿部まゆみ
(日本訪問看護振興財団)
      佐々木智美、中辻香邦子、
      鑓水理恵子
(国立がんセンター東病院)

参考文献
1) R. G. Twycross, Karen Jenns, Jacquelyne Todd編著 
 Lymphoedma Radcliff 2000 UK
2) Lymphoedma BRITTISH JOURNAL OF NURSING 2002 Vol.11, No3~8
3) Julie-Ann Maclaren Skin Changes in lympoedema:pathophysiology and Management options
 International Journal of Palliative Nursing, 2001 Vol7,No8
4) 系統看護学講座 解剖生理学 医学書院 2002
5) Ms.Barbara. Langford がん終末期に発生するリンパ浮腫のケアの実際 ホスピスケア24 2001 ホスピスケア研究会

用語の定義
複合的理学療法
 リンパ浮腫に対して行われる治療で、5つの方法を用いて複合的に組み合わせて行う方法。5つの方法とはスキンケア、リンパドレナージ、圧迫療法、運動療法、生活指導を称する。
スキンケア
 清潔と保湿を目的として行われる。清潔は入浴、部分浴、清拭が患者の状態に合わせて実施される。保湿は、リンパ浮腫を引き起こしている皮膚に対して、感染予防のために皮膚を保護するため、ワセリン、ザーネ、流動パラフィン+ワセリン(1対1)を塗布し、患者の好みに合わせていずれかの皮膚保護剤を活用する。また、リンパ漏、皮膚転移、腫瘍による自壊が認める場合、医師の指示の確認のもとアズレン軟膏や足白癬の場合はビホナゾール軟膏等を使用する
リンパドレナージ
 イギリスやドイツで行っているリンパ浮腫に対するリンパドレナージ方法に基づいて、2種類のドレナージを行なう。 ひとつは患者自身や家族がおこなうことが可能なSLD(Self Lymph Drainage)とリンパ浮腫のスペシャリストが行なうMLD(Manual Lymph Drainage)を看護師が患者の状況に合わせて実施する。
 リンパ還流の障害を受けている部分を把握したうえで、リンパドレナージの手順を決定していく。
圧迫療法
 圧迫、支持、固定により間質内圧を高めることで、リンパ還流と静脈還流を刺激する方法。多層包帯法、圧迫衣類を用いる方法の2種類がある。
多層包帯法
 リンパ浮腫専用に使用する包帯を用いて行い、4種類の包帯(伸縮性のない筒状包帯、パッティング包帯、指用包帯、ショートストレッチ包帯)を用いて行う包帯法である。
圧迫衣類
 腫脹した四肢の組織を圧迫するために使われる、浮腫専用の衣類である。症状や体のサイズに合わせたものを使用し、腫脹の維持に主に使用されるストッキングやスリーブと、伸縮性のある筒状包帯(商品名:チュービコット)を示す。
 圧迫衣類には丸編みと平編みの2種類の編み方をした製品で、これらは段階識に圧迫が四肢に加わることができる製品である。丸編みは静脈瘤の治療に使われる製品であり、リンパ浮腫に対しては四肢の細い部分(手首や足首など)に圧が集中することで、圧力のバランスが崩れる可能性がある。平編みはリンパ浮腫専用に用いられている。圧迫力はクラス1~3に分かれており、1はライト、2はノーマル、3はストロングである。丸編みはクラス1~3、平編みはクラス2~3に分かれている。
 平織りの製品には既製品とカスタムメイドの製品があり、両者ともドイツ製である。既製品は浮腫部位を採寸してサイズ選択し、カスタムメイドは浮腫部位の採寸したサイズの製品である。カスタムメイドは完全オーダーメイドである。
運動療法
 圧迫療法を用いた状況で行う20分程度のリズミカルな歩行などの運動である。
 患肢の可動域に制限がない場合や、制限がある患者は、痛みを伴わない程に上肢・下肢の屈伸運動を進める。
 肩まわし、または髪をとく動作や壁に向かって手を挙上することを、看護師が指導し、継続的に行ってもらう。
生活指導
 リンパ浮腫を増悪させる行動を起こさぬよう日常生活を指導する。

 

          がん患者のリンパ浮腫のケアガイドライン(案)