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(2011年7月1日~)
ホスピス・緩和ケアに関する調査研究報告
2003年度調査研究報告


■経皮的椎体形成術の安全性・有効性の評価と適応
 筑波メディカルセンター病院 リハビリテーション科診療科長
 上杉 雅文

I 研究の目的、方法
(1)研究の目的
①転移性脊椎腫瘍に対する経皮的椎体形成術の安全性・疼痛緩和効果の評価
②椎体形成術適応の検討
研究の必要性
転移性脊椎腫瘍による疼痛はモルヒネなどの強力な鎮痛薬や、放射線治療でも十分な除痛を得ることが困難であり、患者は安静臥床を余儀なくされ、著しい活動制限を受けることが少なくない。これに対し、椎体内へ経皮的に医療用骨セメントを注入する経皮的椎体形成術が近年施行され、疼痛緩和効果が報告されている。しかしながら、肺塞栓症等の危機的合併症の可能性や椎体内に注入した骨セメントの長期的安全性に対する実証データが不足しており、その適応は定まっていない。また、経皮的椎体形成術と放射線治療のどちらを先行するべきかについても見解が一致していない。本研究は転移性脊椎腫瘍の疼痛マネージメントとしての経皮的椎体形成術の安全性と有効性を検証し、放射線治療を含む他の治療法との併用下での適応を判断するための基礎的資料を得ることを目的としている。

(2)研究の方法
◆研究の対象:筑波メディカルセンター及び当該研究機関に入院中もしくは外来通院中の患者で、悪性腫瘍の転移及び原発性椎体腫瘍により頚胸椎または腰椎に病変があると診断されている患者
◆研究方法:X線透視下またはCT透視下に骨セメント注入針を経皮的に刺入後、椎体にセメントを注入する。
  初期症例は放射線照射等他の治療法を行ってなお疼痛緩和が得られない例を対象に行い、有害事象発現頻度の検討をおこなう。有害事象が低頻度であることを確認後、他の疼痛緩和治療と同時に経皮的椎体形成術を開始し、その有効性と効果持続期間をX線画像、疼痛数値評価表等をもちいて、他の治療後に経皮的椎体形成術をおこなった群と比較検討する。

II 研究の内容・実施経過
◎経皮的椎体形成術実施に際しての倫理上の問題
平成15年8月26日開催の筑波メディカルセンター病院倫理委員会において承認を受けた。治療をうける患者本人に対しては説明用のパンフレットを作成し、治療の目的・予想される危険性についての十分な説明を行った後に研究参加への承諾を得た。

◎経皮的椎体形成術実施に際しての医療費上の問題
研究立案段階で、経皮的椎体形成術は保健医療としての認可を受けていなかった。実施に際しては、医療費請求上の問題が存在することが予想された。この点については前述の倫理委員会に於いて、同院緩和ケア病棟入院患者への包括医療として処理し、患者への請求をしないことが確認された。

◎経皮的椎体形成術実施
研究期間中に2名の患者に対して経皮的椎体形成術を施行し得た。性別は2名とも女性。がんの原発部位はそれぞれ右足滑膜肉腫(症例1)、腎細胞癌(症例2)であった。転移部位は症例1が第12胸椎、第1,2,3腰椎、症例2が第2,3腰椎であった。いずれの症例も前医において原発巣への外科的手術および化学療法、放射線照射が行われており、
当院へは脊椎転移の疼痛緩和目的に受診された。
疼痛部位は症例1が第1腰椎付近の腰痛および左大腿部痛、症例2が腰痛および右大腿部痛であった。
椎体形成術施行部位は症例1が第1腰椎、症例2が第2腰椎で、いずれも疼痛の最も強く、がん転移による変形の強い部位にセメント注入を行った。椎体形成術施行後の疼痛は症例1がFace scaleで5から2へと著明な改善を得た。症例2においては最も疼痛の強かった右大腿部の疼痛が改善し得なかったため数値上の変化は認められなかったが、腰痛が軽快したため「床上動作が楽になった。」「ポータブルトイレが使えるようになった。」等の改善点が患者自身により指摘された。
治療後明らかな合併症を認めず、疼痛の増悪もなかった。

III 研究の成果
◎安全性の評価
2例という少ない症例数ではあるが、血圧低下・麻痺・疼痛増悪等の明らかな合併症を認めなかった。椎体形成術の実施に際して、セメント注入前に造影を行い血管内への漏出の有無を確認した事、セメント注入量を最小限にした事、注入時患者自身と疼痛・神経症状の出現につき会話を行いながら施行した事等が安全性の確保に寄与したと考えている

◎有効性の評価
いずれの症例も自覚的な腰痛の軽減は得られた。しかしながら神経根由来と思われる下肢痛についてはあまり変化が認められなかった。そのため、神経根性疼痛が強い患者に対しては数値的な改善は得られなかった。今後、有効性の評価法に疼痛部位・日常生活動作等を加えていく必要性があると考えている。

IV 今後の課題
◎安全性・有効性の評価
本研究で、経皮的椎体形成術の安全性に関して一定の知見が得られた。今後さらなる症例数の集積が望まれる。有効性に関しては当初VAS(Visual Analogue Scale)やFace Scaleなどの数値的評価を予定していた。しかしながら実際の症例は部位、生活動作等、多くの因子が疼痛に影響を及ぼすため、数値的評価のみでは本法の有効性評価には不十分であることが明らかとなった。今後、疼痛部位、動作項目などを含む評価方法の作成が必要である。

◎適応
本研究は3年間の研究期間を予定しており、初年度となる本年度は他の治療を行ってなお疼痛が改善しない2症例が対象となった。今後、放射線治療、手術治療等との同時治療も行い、経皮的椎体形成術の適応に関しての研究を行う予定である。

V 研究の成果等公表予定
日本緩和医療学会総会で発表し、国内外の学術雑誌への投稿を予定している。