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(2011年7月1日~)
事業報告
2010年度 事業報告     (自:2010年4月1日 至:2011年3月31日)

ご挨拶

 日頃より公益財団法人 日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団へのご 理解とご支援に心から感謝申し上げます。2010 年は当財団設立10 年の 節目の年でありました。また、公益財団法人として認定され、2011 年4 月1 日に登記を完了しました。これを機に今後の事業について検討し、 展開していく予定にしています。
 さて、財団の『第11 期(2010 年4 月1 日~ 2011 年3 月31 日)事業 報告書』が完成しましたのでお届けいたします。2010 年度の事業の中 では、大型の調査研究事業として「遺族によるホスピス・緩和ケアの質 の評価に関する研究」があります。同じテーマで2006 年度から3 年を かけて実施された第一次調査研究の報告書を2009 年度末に刊行しまし た。今回は調査対象者を更に増加して第二次調査研究を進めており、最 終報告書は2011 年度末に予定しています。
 新規事業としては、「小児緩和ケア」への支援があります。日本の医 療分野で未開拓の「難病と闘う小児とその家族のための緩和ケア」が如 何にあるべきかといった視点からの「小児緩和ケア研修会」の開催を支 援しました。この研修会は2011 年度も開催を予定しています。その他 の事業もほぼ計画通り実行されており、これらの実行にご尽力とご協力 頂いた各位に深く感謝申し上げます。
 当財団は微力ではありますが、「ホスピス・緩和ケア」の更なる普及・ 啓発に寄与することを願いつつ、事業活動を続けていく所存です。 今後とも、財団に引き続きご支援とご鞭撻を賜りますようお願い申し上 げます。

2011年7月
(公財)日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団 事業委員会委員長
恒 藤 暁


[概 括]

2010 年は、日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団 設立10 年の節目の年であるとともに、新しく施行された公益法人制度の下で当財団が幸い「公益財団」としての認定を受けることができた年ということになる。これを機に、従来の事業展開の在り方の見直しも含め、従来の事業委員会と共に、理事長の諮問機関として「ホスピス・緩和ケア従事者育成推進委員会」を立ち上げるなどして、今後の事業について検討を進めている。
 本年度(2010 年度)の事業の中で特記されるものとしては、3年度に亘る大型の調査研究事業としての「遺族によるホスピス・緩和ケアの質の評価に関する研究」がある。2006 年度から3年をかけて同じテーマで実施された第一次の調査研究の成果である報告書は2009 年度末に刊行・配布されたが、今回も同様の趣旨で、但し調査の対象を一回り大きくした第二次の調査研究が2009 年度から始まり、本年度の2010 年度はその第2年度となり、現在、多数の施設等に調査協力頂き、進行中であり、最終的な報告書は2011 年度末が予定されている。
 新規事業としては、「小児緩和ケア」への支援がある。日本の医療分野で未開拓の「難病と闘う小児とその家族のための緩和ケア」は如何にあるべきかといった視点からの「小児緩和ケア研修会」の開催を支援した。
 なお、この研修会は2011 年度も開催が予定されている。その他の計画された諸事業も、ほぼ計画通り実行されている。



各事業の活動内容について下記の通りご報告申し上げます。

   
1.  ホスピス・緩和ケアに関する調査研究事業(公募)
2.  遺族によるホスピス・緩和ケアの質の評価に関する研究事業 JHOPE Ⅱ
(3 ヵ年計画)
3.  『ホスピス・緩和ケア白書2011』(研究論文集)作成・刊行事業
4.  特定研究「対応困難なスピリチュアルペインの事例検討集の作成」
5.  ホスピス・緩和ケア多職種教育セミナー開催事業
6.  ホスピス・緩和ケアボランティア研修セミナー開催事業
7.  MSW スキルアップ研修セミナー開催事業
8.  グリーフケア研修セミナー開催事業
9.  Liverpool Care Pathway(日本語版)研修セミナー開催事業
10.  ホスピス・緩和ケア従事者育成推進委員会
11.  ホスピス・緩和ケアフォーラム開催事業
12.  一般広報活動事業
13.  APHN研究会開催事業
14.  小児緩和ケアに関する研修会(共催)事業
15.  おわりに
             



[事業活動]

1.ホスピス・緩和ケアに関する調査研究事業(公募)

調査研究課題

(1) 緩和ケアチームの活動内容に関する多施設協同研究
 
(2) 高齢者施設に於ける終末期ケアでのトータルマネジメント技法の開発
 
(3) 在宅緩和ケアにおけるQuality Indicator の開発と遺族満足度との関連の評価
 
(4) 乳がん患者の治療を継続して生きる力を高める看護介入方法の開発
~家族からのサポートに焦点をあてて
 
 
 公募を開始して5年目で、今年は13 件の応募の中から事業委員会の審議を経て、上記の4件が採択された。なお、研究論文は現在収集中で、その後、各事業委員が査読し、財団の「調査研究報告書」として刊行され広く配布される。




2.遺族によるホスピス・緩和ケアの質の評価に関する研究事業 J HOPE Ⅱ(3ヵ年計画)

2006 年度から3 ヵ年計画で実施した同名の調査研究は2008 年度をもって完了し、その成果を「遺族によるホスピス・緩和ケアの質の評価に関する研究 J-HOPE」として118 頁の冊子に掲載し、各方面に配布すると共に、調査研究に携わった研究者たちが、それぞれの学会などで随時報告している。
 今回の第2次調査研究 JHOPEⅡは、この調査研究は定点観測と同じように定時的に反覆して行われることが肝要との視点から、2006 年度からの3ヵ年にわたる第一次調査研究を継承発展させるかたちで、2009 年度からスタートしており、本年度はその第2年目にあたるが、全体の報告書の作成は前回と同様3ヵ年計画である。
 今回の調査対象依頼施設数は、前回を一回りスケールアップして、緩和ケア病棟103 施設、一般病院施設23 施設、診療所等15 施設、調査対象者数は約13,000 人である。




3.『ホスピス・緩和ケア白書2011』(研究論文集)作成・刊行事業

『白書』シリーズは、2003 年度以来の継続事業で、毎年、特定のテーマを掲げて、そのテーマについての論文を中心に編集されている。
「がん対策基本法」が2007 年4月に施行され、2010 年度に「がん対策基本計画」の進捗状況が公表された。
 2012 年度にはこれらが全面的に見直されて第2次「がん対策基本計画」が策定される予定であることも踏まえ、その見直しに先立ち、「がん対策基本法」「がん対策基本計画」スタートの前後でホスピス緩和ケアがどのように変わったのか、又課題がどのようなところにあるのかなどについて、多職種の医療者の論文を通して浮き彫りにすることをめざして、 2010 年度は「がん対策基本法とホスピス緩和ケア」というテーマにすることとした。
 発行部数は2,200 部、配布先は日本ホスピス緩和ケア協会会員の病院、がん診療連携拠点病院、厚生労働省、都道府県・市の健康福祉担当、財団賛助会員などを予定している。
 




4.特定研究「対応困難なスピリチュアルペインの事例検討集の作成」

緩和ケアにおける対応困難なスピリチュアルペインを経験豊富な熟練専門家がどのように対応したかの事例集作成をめざし、医師、MSW、哲学、社会学、宗教学の専門家6名からなる研究グループが、2009 年度の予備的研究を踏まえ、本年度は各事例について再度検討して事例原稿を確定し、解説内容を再確認するなどして事例検討集の作成700 部作成、緩和ケア病棟210施設、緩和ケア・チーム 126 チーム、在宅ケア 99 施設等に配布した。
 





5.ホスピス・緩和ケア多職種教育セミナー開催事業

ホスピス・緩和ケアにおいては多職種かつスモールグループによるチーム医療が有用との観点から、医師、看護師、MSW, 薬剤師、などからなる小グループを作り、それぞれに於いてディスカッション、事例検討、ロールプレイなどを行い、実践的に有能な人材の育成を目指す。
 このプログラムは、以前から日本ホスピス緩和ケア協会のプログラムを支援する共催というかたちですすめてきている。従来は東京(昭和大学)で開催されてきたが、地域への拡大を目指し、本年度は10 月30 ~ 31 日に福岡市で開催された。

 会 場: 福岡市市民福祉プラザ
 参加者: 受講者 58名  スタッフ:7名




6.ホスピス・緩和ケアボランティア研修セミナー開催事業

ホスピス・緩和ケアにおけるボランティアの役割を確認し、そのケアの向上をめざして、2002 年以来継続して日本病院ボランティア協会との共催ですすめているプログラムである。2010 年度は9月3日に大阪のクレオ大阪で講師としてお招きした恒藤 暁教授(大阪大学大学院 医学系研究科 緩和医療学)によるロールプレイを挟んだ基調講演のあと、3つの分科会がもたれた。

 基調講演:「緩和ケアとコミュニケーション」 恒藤 暁 教授
 分科会 :①ホスピス・緩和ケア病棟での活動のひろがり
      ②在宅ホスピス・緩和ケアにおけるボランティアの役割
      ③よりよい活動を目指して(活動の再考と評価)
 参加者 :209名

 




7.MSW スキルアップ研修セミナー開催事業

ホスピス・緩和ケアにおけるソーシャルワーカーのスキルアップを諮るためのセミナーで、2006 年から継続して実施している。2010 年度は講演及び演習のほかに、患者・家族の方々からの声を聴くプログラムを企画した。

 実施日時:2010 年11 月20 日(土)~ 21 日(日)
 場 所: 社会医療法人近森会 近森病院(高知市)
 講 師: 山口龍彦 高知厚生病院副院長
      田村里子 東札幌病院
      福地智巴 静岡がんセンター
 参加者: 50名




8.グリーフケア研修セミナー開催事業

グリーフケア研修会は2007 年度以降毎年実施してきているが、グリーフケアが医学や看護の分野だけでなく、心理学、社会福祉学、宗教学など学際的観点からの包括的アプローチが望まれるとの観点から、本年度は研修セミナー参加呼びかけの対象を広げ、基礎研究から臨床実践までを含めた学術交流の場としての研修セミナーとした。


実施日時: 2010 年12 月11 日(土)
場 所 : 早稲田大学国際会議場
参加者 : 300名




9.Liverpool Care Pathway(日本語版)研修セミナー開催事業

Liverpool Care Pathway(LCP) は英国で作成されたもので、臨死期にある患者とその家族に対して医療者が行うべき看取りのケアをチェックリストに従って確認していく形式をとっている。
 LCPは当財団の助成で2004・2005 年に翻訳され、その後LCP 日本語版の妥当性、有用性の検証を経て、昨年度財団によってマニュアルが作成された。
 今年度は、この日本語版マニュアルを用いて、次のような大会開催の機会を捉えて、LCP研修セミナーを開催した。

・日本ホスピス緩和ケア協会・関東甲信越支部大会
  5月16日(日) 東京ステーションコンファレンス
  参加者 149名
・第15 回日本緩和医療学会学術大会
  6月18日(金) 東京国際フォーラム
  参加者 200名
・第34 回日本死の臨床研究会年次大会
  11月6日(土) いわて県民情報センター(盛岡)
  参加者 280名




10.ホスピス・緩和ケア従事者育成推進委員会

昨年度、「将来構想・財政委員会」において、理事長への答申を検討している過程で、ホスピス・緩和ケアの医療者(医師、看護師)の育成の必要性が語られたが、この案件については答申までに具体的結論を得るに至らなかった。委員の間でこのテーマが今日のホスピス・緩和ケアにとって重要な課題であるとの認識から、引き続き理事長の諮問委員会を設けて検討することになり、現在までに、10 月3日(日)、12 月26 日(日)と本年(2011 年)2月11 日(金)の3回、大阪で委員会を開催し、WEBと座学(schooling)を併用しての研修プログラム、また協働を呼びかける団体などについて検討されているが、それとは別に、プログラムの基本的方向性を探る趣旨でカナダで「Whole Person Care」の普及につとめているカーニー教授夫妻を2011 年10 月に招く計画をすすめている。




11.ホスピス・緩和ケアフォーラム開催事業

財団設立以来、今回が23回目となるフォーラムを、6月5日(土)、徳島市のあわぎんホールで開催した。本年度は国立がんセンター名誉総長 垣添忠生氏の特別講演「妻を看取る日」に引き続いて、シンポジウム「先端医療から緩和ケアまで」が柳田邦男氏を座長にもたれた。参加頂いたシンポジストは次の方々である。

 南條輝志男氏 前和歌山県立医科大学理事長(学長)
 森  亘 氏 (財)医科科学研究所理事長
 和田 眞 氏 徳島大学副学長
 青野敏博 氏 徳島大学前学長(司会)
 参加者:850名




12.一般広報活動事業

年2回の『財団ニュース』の発行、ホームページの改定、その他必要に応じて財団のパンフレット改定・刊行などを行った。




13.APHN研究会開催事業

アジア・太平洋(オーストラリア)地域に於けるホスピス・緩和ケアの普及と向上を推進しているAsia Pacific Hospice Network (in Singapore) が、今後の活動・研究の方向性・テーマを協議・検討する研究会を財団主催で8月26日(木)に岐阜のグランドホテルで開催した。
 参加者はインド、インドネシア、オーストラリア、韓国、シンガポール、タイ、香港、マレーシア、日本の9カ国からホスピス・緩和ケア医療従事者30 名が集い、各国の緩和ケアの現状と研究課題が発表され、アジア太平洋地域での国際研究の必要性が確認され、今後、連携を深めながら協同研究を推進することになった。




14.小児緩和ケアに関する研修会(共催)事業

厚生労働省科学研究費補助金によるがん臨床研究事業の平成21年度と22年度の研究成果を基に設定された教育プログラムを利用して行う小児科医を対象とする短期集中型研修会を開催した。プログラムは小児緩和ケアという視点で、小児のがん及びそれ以外の様々な疾患を対象に、事例検討、ワークショップなどで構成されている。

 会 場: 日本財団ビル(東京)
 期 日: 10月16~17日
 講 師: 13名
 参加者:  33名




15.おわりに

当財団は2000年12月の設立で、2010年12月をもって設立10年になる。この10年間は、先ずホスピス・緩和ケアをできるだけ多くの一般社会の方々に正しく理解して頂こうという広報活動の意味をこめて、全国23 の都市でフォーラムを開いたり、「世界ホスピスデー」へ参加したり、ホスピス・緩和ケアを医師・看護師だけでなく、MSW,ボランティアの方々のホスピス活動を支援したりしてきた。また、地域への拡がりを願って各地で地域ホスピスの集いをもった。他方で、財団の設立時からの中心主題であるホスピス・緩和ケアに関する調査研究も、公募、特定研究、大型の調査研究など比較的多様な態様で進めてきている。また、「小児緩和ケア」といった、新しい分野への支援もてがけている。
 現在までの当財団の活動は、上記のように比較的多岐にわたっているが、ホスピス・緩和ケアへの一般社会の理解のひろがり、他方で「がん対策基本法」が制定され、その流れの中で始っている幾つかの新しい制度や活動、更には日本ホスピス緩和ケア協会の組織や活動の進展、日本緩和医療学会の組織や活動の飛躍的発展、等々を観るとき、日本のホスピス・緩和ケアは10年前に比べ、明らかに新しいステージに入っていると云える。こうした中で、当財団は今後どのような道を歩むべきか、「ホスピス・緩和ケアのために」という原点をもういちど確かめながら、今後の道を考究していきたい。

以上