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(2011年7月1日~)

ホスピス・緩和ケアに関する調査研究報告
2006年度調査研究報告
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緩和ケアのための標準カルテ・フォーマットの作成
-緩和ケア実践を支援するための緩和ケアパッケージの開発-
ピースハウス病院
前山 悦子

I 調査・研究目的・方法

 本研究は、全国に普及、展開し始めた緩和ケアが、一定の水準を確保できるよう支援することを目指し、平成16年度から開始された。

 「緩和ケアのための標準カルテ・フォーマットの作成」は、緩和ケア臨床で日常遭遇するだろう諸問題を包括的に把握し、同定された 問題に対して推奨される治療やケアの指針を明確化できるようなツールを各種組み合わせるものである。具体的には、緩和ケアを実践 する上で役立つと考えられる諸情報を「緩和ケアパッケージ」として体系化し、日常のケア評価・記録に利用しやすくすることを目的とした。

II 調査・研究の内容・実施経過

 平成16年度は、緩和ケアパッケージに組み込む内容の枠組みを検討し、次年度にむけての課題を明確化した。平成17年度は、緩和ケア パッケージに組み込む内容の枠組みの暫定案の作成、およびその内容の具体的情報収集の期間とした。平成18年度はインターネット上で 各種ツールを公開するためのホームページの作成と登録基準作り、継続的な情報収集方法、今後の運用方法について、具体的に準備する ことを計画した。

1.本年度の実施経過
1)緩和ケアパッケージに組み込むツールの候補リスト作成
 昨年度までの研究実績、および、複数の緩和ケア臨床家の推薦をもとに、緩和ケアパッケージに組み込むツールの候補リスト (以下、候補リスト)を作成し、研究者間で具体的に確定する作業を行った。以下、作業手順を記した。

(1)候補リストの各種ツールの原本、および関連資料を常に確認できるよう各種ツールを掲載するための資料を再整理し、  データベース化した。その際、原則として日本語で利用できるもののみを採用した。また、資料を入手できない場合は、 候補リストから除外した。
(2)候補リストの各種ツールを、内容の類似性を考慮し構造化した。

2)ホームページ立ち上げの準備、運用方法検討
 インターネット上で各種ツールを公開するためのホームページを立ち上げるため、共同研究者らにより、検討を重ねた。 検討内容を以下に記した。
(1)ホームページの名称
(2)ホームページの構造
(3)ホームページへの情報の掲載と編集
(4)ホームページの管理と運用

3)各種ツールの臨床利用とその課題
 昨年度に引き続き、各種ツールを実際に臨床で使用する上での利点や欠点、臨床利用する上で工夫している点等、 緩和ケア施設の看護師を対象に、臨床レベルでの声を拾う作業を行った。具体的なヒアリング内容を以下に記した。

(1)患者の入院から死亡まで、看護の日常業務の中に組みこまれている患者や家族を継続的にアセスメントする方法
   例)各種症状評価法、チェックリスト等
(2)臨床実践を支援するガイドライン、スタンダード、ケアプラン等
(3)各種ツールを日常看護の中で利用するために工夫している点
(4)各種ツールを日常業務の中に継続的に組み込み、運用していく上での困難
(5)今後にむけての課題(改訂方針等)

III 調査・研究の成果

1.ホームページの実際
大学病院医療情報ネットワーク(UMIN)ホームページを利用し、ホームページを開設した。 ホームページは平成18年8月より試験的に立ち上げ、11月より本格的に稼動させた。
〈ホームページアドレス:http://www.pcpkg.umin.jp/

1)ホームページの名称
緩和ケアパッケージは、緩和ケア従事者が実際に現場で担う臨床・研究・教育の3分野を重視し、緩和ケアパッケージの 具体的な内容を簡潔に表現できるように、公開ホームページの名称を、「緩和ケア臨床・研究・教育ツール」と定めた。(資料1)

2)ホームページの構造
緩和ケアパッケージに組み込む内容の構造は、大項目として、【評価/アセスメント】、【教育】、【ガイドライン】の3つに分類した。 さらに下位項目として、以下のように[ ]の中に整理した(資料2)。2007年3月15日現在の掲載ツール数は、【評価/アセスメント】 41ツール、【教育】8ツール、【ガイドライン】5ツールである。なお、文中の( )内の数字は、掲載されているツール数を示す。 【評価/アセスメント】の詳細を資料3として提示した。

【評価/アセスメント】:[症状評価(20)][QOL(8)][質評価(2)][心理・社会・霊的ケア(3)][介護者・家族のケア(2)] [その他のツール(6)]
【教育】:[教育カリキュラム(5)][教育研修資料(2)][診療記録フォーマット (1)]
【ガイドライン】:[症状緩和(2)][緩和ケア全般(3)]

3)ホームページへの情報の掲載と編集
 当ホームページへの情報の掲載は、必ず出典名を記載し、当ホームページから直接ダウンロードが可能なツールに関しては、 必ず著作者の許諾を得た後に掲載作業を行った。ホームページに掲載されている情報の利用に関しては、「ご利用上の注意」として、 ホームページ上に明示した。
 ホームページへの掲載作業は、各ツール情報の内容を、「使用目的」「対象者」「文献」等、簡潔に要約し、一定の形態で紹介する こととした。掲載例を資料4に示した。
 各種ツールを公開するための登録基準については、臨床レベルでの意見を取り入れやすくするために、原則として情報登録の窓口を 広く設け、厳格な登録基準は設けない方針とした。本年度は、研究者らが主体となり情報収集につとめたが、来年度からは、当ホーム ページを広報し、有用な情報を自薦・他薦してもらう体制をとることとした。
 ホームページの内容、登録・訂正・削除の手続き、閲覧者等から掲載情報の内容について指摘を受けた場合には、共同研究者間で協議した後、 適切な措置を講ずることとした。問い合わせ方法等、当ホームページに記載した。

2.ホームページの管理と運用
ホームページの管理と運用に関して共同研究者内で討議の上、必要な項目を定めた。ホームページ管理責任は共同研究者の1人が担い、 来年度以降も継続してホームページを管理・運営していくことが決定した。

IV 今後の課題

本研究は、「緩和ケアのための標準カルテ・フォーマット」として、臨床現場で活用できるツールの詰め合わせ(緩和ケアパッケージ)作り を支援するための仕組みを考えてきた。

 緩和ケアパッケージは、常に更新されるものである。当ホームページは、「緩和ケアを支援するために必要とされているものは何か」「参考に できる資料や利用できるツールは何か」に関する詳細を把握しつつ、継続的に、修正・改訂を行っているが、緩和ケア従事者に有益な情報は、 各種媒体から常に発信されており、それらを完全に網羅することに限界がある。さらに、緩和ケアの考え方は多分野に渡り、広く緩和ケア従事 者の要望を満たすには、現時点では情報量の不足や偏りがある。
 各種ツールの臨床利用とその課題について、昨年度は1施設、本年度は、2施設のヒアリングが可能であった。両施設で、家族ケア、遺族ケア、 疼痛、リンパ浮腫、アロマセラピー、口腔アセスメント・ケアプラン、看取りチェック用紙、スピリチュアルケア、鎮静、せん妄、スキントラ ブル(乾燥、浮腫)、心地よい生活・環境作り等、既存のツールを参考にしながら多数のアセスメントシートやケアプランが一定の書式の形で 整備されていた。しかし、実際に各種ツールを日常業務の中に組み込み運用していく上での困難が語られ、臨床場面での実際のケアへの適用方法 についてはきめ細かい検討が必要であった。当ホームページが、各種ツールを臨床利用する際の具体的問題点を報告しあい、意見交換できる場 としても、今後活用されることが期待されていた。
 緩和ケア体制作りを推進するための支援の一つとして、当ホームページが緩和ケアの様々な場面で積極的に活用されるよう、緩和ケアリソースの 把握や収集を継続的に行い、常に最新の情報となるようなシステムを構築していきたいと考える。さらに、多方面からの意見を募り、臨床の声に 柔軟に対応できる体制を整備していきたい。

V 調査・研究の成果等公表予定

本研究の成果は、国内の学会および研究会にて発表するとともに、国内の雑誌へ紹介することを予定している。
[共同研究者]
森田達也(聖隷三方原病院緩和支持治療科)
本家好文(広島県緩和ケア支援センター)
宮下光令(東京大学大学院医学系研究科 成人看護学/緩和ケア看護学分野)
河正子(東京大学大学院医学系研究科 客員研究員)