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(2011年7月1日~)
ホスピス・緩和ケアに関する調査研究報告
2002年度調査研究報告


■遺族ケアのニーズと現状に関する基礎調査研究 ―わが国のホスピス・緩和ケア病棟における遺族ケアの現状と課題―
 淀川キリスト教病院 看護係長
 高山 圭子


1. はじめに

 遺族ケアはホスピス・緩和ケアの重要な働きの一つと位置づけられており(WHO, 1994)、わが国でも、多くのホスピス・緩和ケア病棟において、様々な遺族ケアの取り組みが行われている。しかし、その内容に関しては、標準化された方法があるわけではなく、各施設の判断に委ねられているのが現状である。一部の施設での遺族ケアの取り組みは、誌上や学会等において報告されており、その一端を垣間見ることができる(e.g. 椎野・高山・田村, 2001; 松島・赤林・西立野, 2001)。近年では、そのような報告は増加しつつあり、遺族ケアへの関心の高まりが感じられる。

 わが国のホスピス・緩和ケア病棟における遺族ケアは、各施設の真摯な取り組みによって着実に発展してきている。しかし、さらなる進展と今後のあり方を考える上では、ホスピス・緩和ケア病棟での遺族ケアの現状と問題点について、包括的に把握する系統立った調査研究が必要であると考えられる。これまで海外では、このような調査研究がいくつか行われている(Lattanzi-Licht, 1989; Bromberg & Higginson, 1996; Foliart, Clausen, & Siljestrom, 2001; Payne & Relf, 1994; Wilker & Lowell, 1996)。わが国では、近年、Matsushima, Akabayashi, & Nishitateno(2002)によって初めて、ホスピス・緩和ケア病棟における遺族ケアに関する実態調査が、1999年4月時点での全てのホスピス・緩和ケア病棟54施設を対象として実施された。Matsushima et al.(2002)のこの調査報告は、わが国のホスピス・緩和ケア病棟での遺族ケアの現状を初めて明らかにした貴重なデータであり、その意義は非常に大きい。しかし、この研究では、遺族ケアの内容や問題点、今後の課題の詳細に関してまでは十分なデータが得られていない。そこで本研究では、Matsushima et al.(2002)の研究を土台として、遺族ケアの実施状況や問題点を明らかにし、今後のあり方について検討する。また、ここ数年で、緩和ケア病棟承認届出受理施設は急増し、2002年9月現在108施設に達している。このような施設数の変化と、関心の高まりに伴う遺族ケアの進展によって、わが国のホスピス・緩和ケア病棟での遺族ケアの実態が変化していることが予見され、その点についても本研究では検討する。

2. 目 的

 本研究の目的は以下の2点である。

1) ホスピス・緩和ケア病棟での遺族ケアの種類と内容について詳細に把握する。
2) ホスピス・緩和ケア病棟での遺族ケアの実際問題と今後の課題を明らかにする。

3. 方 法
1. 対象と調査方法
2001年12月末日における緩和ケア病棟承認届出受理施設(協議会A会員:97施設)全てを対象とし、ホスピス・緩和ケア病棟の看護師長宛てに自記式質問紙調査を郵送した。97施設中87施設から回答が得られ、回収率は89.7%であった。調査期間は、2002年11月から12月である。回答の得られた施設における病棟の概要と病棟スタッフの勤務態勢は、表1及び表2に示す通りである。

2. 調査内容
調査項目は大きく分けて、[1]遺族ケアの実施状況、[2]遺族ケアの実際問題、[3]遺族ケアの今後の課題に対する意識の3領域についてである。


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