一般情報
ホスピス・緩和ケア
従事者への情報
財団紹介
事業活動について

訪問者数 :
昨日 :
本日 :
(2011年7月1日~)
事業報告
2016年度 第17期事業報告書     (自:2016年4月1日 至:2017年3月31日)



[概 括]

 2016 年度は、質の高い調査研究と人材育成事業を中心に、普及・啓発および国際交流の4
領域に、15 周年記念事業を加えて19 事業を行った。
 調査・研究事業では、非がん疾患の終末期に関する調査が3 年目に入った。また継続して
実施している大規模な調査研究「遺族によるホスピス・緩和ケアの質の評価に関する研究」は、
新たに第4 次調査が開始された。また、新しい領域として「小児患者に対する緩和ケアチー
ムの介入についての実態調査」がまとめられた。人材育成事業では、引き続き「Whole
Person Care ワークショップ」を大阪で開催するとともに、『新たな全人的ケア:医療と教育
のパラダイムシフト』の出版記念講演会を開催した。広報・啓発事業では、「ともいき京都1
周年記念イベント」の開催を助成した。国際交流事業では、第2 期日本・韓国・台湾共同研
究事業が2 年目に入った。また海外演者による講演会を、英国よりEllershaw 教授を招聘し
て開催した。その他各事業も計画通りに進められて、ご協力いただいている皆様方に深く感
謝する。
 以下、個別の事業毎に実施報告の概要を記した。


各事業の活動内容について下記の通りご報告申し上げます。

   
1.  遺族によるホスピス・緩和ケアの質の評価に関する調査研究事業
(第4 次調査・1 年目)
2.  『ホスピス・緩和ケア白書 2017』(特集テーマの概説+データブック)
 作成・刊行事業
3.  非がん疾患の終末期医療の実態に関する調査(3 年目)
4.  わが国における小児患者に対する緩和ケアチームの介入についての実態調査
5.  認定・専門看護師による診断・治療開始時期のがん患者と家族への
 オリエンテーション・プログラムの開発
6.  ホスピス・緩和ケアボランティア研修セミナー開催事業
7.  Whole Person Care ワークショップ開催事業
8.  グリーフケア研修セミナー開催事業
9.  高齢者介護施設等の看取り教育研修
10.  Hutchinson 教授 翻訳出版記念講演会
11.  ホスピス・緩和ケアフォーラム開催事業
12.  ホスピス財団15 周年記念講演会
13.  『これからのとき』『旅立ちのとき』冊子増刷
14.  一般広報活動事業
15.  ともいき京都1周年記念イベント
16.  International Congress on Palliative Care 関連事業
17.  Ellershaw 教授による講演会&シンポジウム
18.  APHN 関連事業
19.  第2 期日本・韓国・台湾共同研究事業(2 年目))
  おわりに
             



[事業活動]

1.遺族によるホスピス・緩和ケアの質の評価に関する調査研究事業(第4 次調査・1 年目)

本事業は第1 回目(J-HOPE 1)を2006 年度~ 2008 年度、第2 回目(J-HOPE2)を2009年度~ 2011 年度、第3 回目(J-HOPE3)を2012 年度~2015 年度に実施した。
 調査研究は主研究と付帯研究で構成され、世界的に大規模かつ質の高い研究として国際的にも評価されている。主研究では緩和ケア病棟のケアの質を評価し、その結果を各施設にフィードバックすることによりケアの質の改善を促すものである。
 今回、第4 回目(J-HOPE4)は、従来のものに日本・韓国・台湾によるコホート研究(疫学研究の中でも、特定の集団を対象として長期的に経過を追跡する調査手法)との関連を検討する予定である。
 2016 年度はコアメンバー会議を開催した。



2.『ホスピス・緩和ケア白書 2017』(特集テーマの概説+データブック)作成・刊行事業

 『ホスピス緩和ケア白書』として、2016 年度版まで下記の11冊を刊行・配布している。
 2017 年度版では、小児緩和ケアに焦点を当て、わが国の現状と活動状況等の特集を発行した。

2004年 ホスピス緩和ケアの取り組みの概況
2005年 ホスピス緩和ケアの質の評価と関連学会研究会の紹介
2006年 緩和ケアにおける教育と人材の育成
2007年 緩和ケアにおける専門性~緩和ケアチームと緩和ケア病棟~
2008年 緩和ケアにおける医療提供体制と地域ネットワークの状況
2009年 緩和ケアの普及啓発・境域研修、臨床研究
2010年 緩和ケアにおけるボランティア活動とサポートグループの現状
2011年 がん対策基本法とホスピス緩和ケア
2012年 ホスピス・緩和ケアに関する統計とその解説
2013年 在宅ホスピス・緩和ケアの現状と展望
2014年 緩和ケアにおける専門医教育の現状と課題&
     学会・学術団体の緩和ケアへの取り組み
2015年 ホスピス・緩和ケアを支える専門家・サポーター
2016年 緩和デイケア・がん患者サロン・デイホスピス
2017年 小児緩和ケアの現状と課題
 




3.『非がん疾患の終末期医療の実態に関する調査(3 年目)

 わが国では非がん疾患の終末期での緩和ケアに関する調査が少ない。本研究では、非がん疾患への緩和ケア、専門的緩和ケアの提供などに関する調査を行い、わが国における今後の非がん疾患の終末期医療の方向性を考える上で有用となるデータを集積する。
 初年度は、非がん疾患の絞込みなどの研究プロトコルを検討する会議を開催し、対象疾患を限定する調査と、疾患は限定せず医師の専門性などを限定した調査が検討された。
 2015 年度は、緩和ケア・アプローチの必要な非がん患者を同定するツールとして、諸外国で開発されたツールの日本語訳及び日本語版を作成し、そのツールを臨床現場で活用した場合のメリット、デメリットを探索し、わが国の臨床現場において緩和ケア・アプローチを同定することの意義を検討した。
 2016 年度は、上記ツールを用いた調査の研究プロトコルを確定し、単施設におけるパイロット研究を実施した。また、緩和ケアが必要な患者の同定に関して、家庭医を対象にした質的研究を行った。本研究は4 年間の継続研究を計画している。



4.わが国における小児患者に対する緩和ケアチームの介入についての実態調査

第2 期がん対策推進基本計画(2012 年)において、小児がんが新たな重点項目となったが、小児専門の緩和ケアチームは、未整備であり緩和ケアを必要としている小児患者に対しては主として成人対象の緩和ケアチームが介入している。また、わが国における小児緩和ケアの実態についても正確なデータは存在していない。
 本調査では、小児がん診療拠点病院15 施設およびがん診療連携拠点病院401施設の医師を対象としたアンケート調査を実施した。




5.認定・専門看護師による診断・治療開始時期のがん患者と
  家族へのオリエンテーション・プログラムの開発

 「診断時からの緩和ケア」として、全体像を見据えた包括的なアプローチが望まれているが、標準的なプログラムが開発されておらず、看護師個人の技量や能力に依存している状態である。そこで認定・専門看護師の標準的なオリエンテーション・プログラムが開発されることは、今後の相談支援体制や心理社会的支援の充実に大きく貢献できると考えられる。同時に全看護師のオリエンテーションスキルの質の維持、向上に寄与することも考えられる。
 本研究では、プログラムの開発および妥当性の検討を行った後に、病期がⅣ期で生命予後が3 カ月以上見込まれる患者を対象として、2 施設30 名においてベースライン調査を実施した。ベースライン調査後、研究協力者を対象として本プログラムを用いた研修を実施した。




6.ホスピス・緩和ケアボランティア研修セミナー開催事業

 ホスピス・緩和ケアにおけるボランティアの役割を確認し、そのケアの向上をめざす研修セミナーは2002 年以来継続して日本病院ボランティア協会との共催で実施されている。従来は関西地区での開催が多かったが、地方での開催を求める声があがっているため、地方での開催を計画している。

・テーマ「あらためて知りたいホスピスボランティアのこと」
・実施日:2016 年7 月21 日
・場 所:霞ヶ浦医療センター (茨城県土浦市)
・基調講演(講師):高宮有介氏(昭和大学医学部 医学教育推進室)
            田村里子氏(一般社団法人WITH 医療福祉実践研究所)
・参加者:57 名

ホスピス・緩和ケアボランティア研修セミナーの様子その1   ホスピス・緩和ケアボランティア研修セミナーの様子その2




7.Whole Person Care ワークショップ開催事業

 本ワークショップは2012 年より開催され、ホスピス・緩和ケアに従事する医師、看護師、薬剤師、ソーシャルワーカーなどのメディカルスタッフの育成を目的としたもので、従来の知識提供型ではなく、グループワークを通じてWhole Person Care の学びを深めるものである。
 2016 年度も引き続き、第9 回ワークショップを大阪で開催した。

・実施日:2016 年8 月27 日(土)
・場 所:千里ライフサイエンスセンター(豊中市)
・講 師:恒藤 暁氏(京都大学大学院医学研究科)
     安田裕子氏(一般社団法人スピリチュアル研究所)
・参加費:賛助会員10,000 円 非会員15,000 円 
・参加者:20 名

Whole Person Care ワークショップの様子



8.グリーフケア研修セミナー開催事業

 ビリーブメント(死別)とそれに伴うグリーフ(悲嘆)に対する援助は、ホスピス・緩和ケアの領域のみならず、東日本大震災という未曽有の災害により大きな社会的関心事となりつつある。しかしながら、ビリーブメント体験についての理解や、死別者への援助手法に関して、わが国での学術的な貢献は、十分とはいえないのが現状である。
 財団はスピリチュアルケアへの貢献の一環として、この分野での基礎研究から臨床実践までを含めた学術的交流として「グリーフ&ビリーブメント・カンファレンス」の開催を定期的に継続して実施しており、第8 回を開催した。

・実施日:2017 年2 月4 日(日)
・場 所:龍谷大学大阪梅田キャンパス
・参加者:約80 名

グリーフケア研修セミナーの様子



9.高齢者介護施設等の看取り教育研修

2025 年問題、すなわち団塊の世代が大量に死を迎える問題により、病院で看取りを行うのは設備的にも財政的にも困難で、今後は高齢者介護施設での看取りが必要となる。しかし、これらの施設では看取りの経験が少なく、敬遠される傾向にある。このことより、高齢者介護施設を対象にした看取りの教育プログラムの開発が必要であり、本財団が担うべきで事業である。
 2016 年度は教育プログラムを開発するためのプロジェクトをスタートさせ、2 回の会合を行い、調査方法の検討や、教育プログラムの具体的な方法論に関して意見交換を行った。




10.Hutchinson 教授 翻訳出版記念講演会

 『Whole Person Care』の日本語版である『新たな全人的ケア:医療と教育のパラダイムシフト』の発刊を記念して、本書の紹介と普及を行う目的で、編者のHutchinson 教授を招聘し、医療従事者を対象としたWhole Person Care に関する講演会を大阪と東京で開催した。

・実施日:2016 年11 月26 日(土)13:00 〜 17:00 大阪(千里ライフサイエンスセンター)
     2016 年11 月27 日(日)13:00 〜 17:00 東京(大手町ファーストスクエア―)
・対 象:医療関係者 (逐次通訳付)
・参加者:大阪会場49 名、東京会場69 名
 
Hutchinson 教授 翻訳出版記念講演会の様子-1   Hutchinson 教授 翻訳出版記念講演会の様子-2




11.ホスピス・緩和ケアフォーラム開催事業

 ホスピス・緩和ケアについての正しい理解を一般の方々へ広く啓発する目的で、財団設立以来継続して実施している、講演とシンポジウムを軸としたプログラムである。2015 年度までに28 都市で開催した。
 2016 年度は10 月に、岐阜県・各務原市(かがみがはら市)で開催した。

・実施日:2016 年10 月1 日(土)
・場 所:各務原市文化ホール
・講 師:渡辺 正氏
・テーマ:「地域でつなぐ緩和ケア」
・参加者:151 名

ホスピス・緩和ケアフォーラム開催事業の様子-1   ホスピス・緩和ケアフォーラム開催事業の様子-2




12.ホスピス財団15 周年記念講演会

 本年度は、2000 年12 月の財団発足以来15 年目の節目であり、今まで多くの支援を頂いた方々への感謝を表すと共に本財団の更なる発展を願い、記念講演会を実施した。

・日時:2016 年7 月2 日(土)16:00 ~ 18:00 
・場所:新阪急ホテル 紫の間
・内容:記念講演&鼎談
    講演:志真 泰夫氏「しっかり生きて、ありのままに逝くために」
    鼎談:柏木 哲夫氏、志真 泰夫氏、恒藤 暁氏
・参加者:200 名

 




13.『これからのとき』『旅立ちのとき』冊子増刷

 『これからのとき』は2006 年の出版以来、遺族ケアの働きに用いられている。また、『旅立ちのとき』は昨年8 月に発行し、いずれも継続的に追加配布の要望が寄せられており、必要に応じ増刷を行った。




14.一般広報活動事業

 年2 回の『ホスピス財団ニュース』の発行を始め、ホームページの充実、更新その他必要に応じて財団のパンフレット改定・刊行などを行った。




15.ともいき京都1周年記念イベント

 がんを体験した人、その家族や親しい人達が、日頃の思いや悩みを語り、医療の専門職が一緒に対話する場として「ともいき京都」が昨年スタートした。その1 週年を記念して、活動のより広い理解を促すと共に、関係者のネットワークショップ作りを目的とした記念イベントが行われた。

・実施日:2016 年7 月9 日( 土) 13:30 ~ 17:00
・場 所:河原町カトリック教会
・内 容:活動紹介、がん患者の体験談、音楽プログラム、詩朗読(石田ひかり氏) 等
・参加者:290 名

ともいき京都1周年記念イベントの様子-1   ともいき京都1周年記念イベント-2




16.International Congress on Palliative Care 関連事業

 カナダMcGill 大学のBalfour Mount 教授が創設し、隔年に開催される緩和ケアに関する国際会議であり、当財団から1 名が参加した。




17.Ellershaw 教授による講演会&シンポジウム

 ホスピス財団設立15 周年記念行事の一環として、Liverpool Care Pathway を開発された英国リバプール大学のEllershaw 教授を招き、講演会とシンポジウムを開催した。
 本会は、第40 回日本死の臨床研究会年次大会(2016 年10 月8 ~ 9 日)に合わせて札幌で開催し、年次大会においても、大会と財団の共催でEllershaw 教授の講演会を2 回開催した。

・実施日:2016 年10 月7 日(金)13:30 〜 17:30
・会 場:札幌コンベンションセンター
・テーマ:「死にゆく患者のケアをいかに改善させるか」(同時通訳付)
 第1 部:講演 John Ellershaw 教授(リバプール大学 緩和医療学)
 第2 部:シンポジウム
     座長 恒藤 暁氏(京都大学大学院医学研究科)、
        田村恵子氏(京都大学大学院医学研究科)
     シンポジスト J
        ohn Ellershaw 教授、茅根義和氏(東芝病院 緩和ケア科)、
        杉田智子氏(京都府立医科大学大学院保健看護学研究科)、
        田村里子氏(WITH医療福祉実践研究所 がん・緩和ケア部)
・参加者:82 名

 




18.APHN 関連事業

 当財団はシンガポールに本部を設置するAPHN(Asia Pacific Hospice Network)の会員として、当財団設立以来その活動を支援している。2016 年度は8 月26 日~ 27 日、ベトナムにて理事会が開催され、当財団から1 名が参加した。




19.第2 期日本・韓国・台湾共同研究事業(2 年目)

 緩和ケア病棟に入院している患者を対象としたコホート研究として、終末期がん患者の死にゆく過程の諸症状の変化や治療の効果を明らかにすることを目的として、2015 年度から研究が開始され、会議、メール、スカイプを通じて各分担研究者に必須の調査項目の抽出を依頼した。
 2016 年度は、韓国、台湾の研究者を招き、合同会議を行い、調査結果に基づいた具体的な研究内容を決定し、研究計画書を作成した。研究目的は、緩和ケア病棟に入院する終末期がん患者における終末期医療の実態の探索である。2016 年度の後半には、研究対象とする患者登録を開始した。
 本研究事業は3 年間の継続研究を計画している。




おわりに

 2016 年度は前述の19 事業を実行した。 特にホスピス・緩和ケア従事者を対象にした「WholePerson Care ワークショップ」は、『新たな全人的ケア』が出版されたこともあり、今後も財団の独自性が発揮される教育事業として充実させる考えである。
 また、世界的にも高く評価されている「遺族によるホスピス・緩和ケアの質の評価に関する研究」は、第4 次計画が策定され、従来のものに加え日本・韓国・台湾によるコホート研究との関連も加える計画である。
 2017 年度も、本年度の路線を継承しつつ、独自性のある調査・研究の充実に力を注ぐとともに、高齢者介護施設での看取り教育のプログラムの開発にも取り組む考えである。