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(2011年7月1日~)
事業報告
2018年度 第19期事業報告書     (自:2018年4月1日 至:2019年3月31日)



[概 括]

 2018 年度は、調査研究事業、人材育成事業、普及・啓発事業および国際交流事業の4 領域で18 の事業を行った。調査・研究事業では、継続して実施している大規模な調査研究「遺族によるホスピス・緩和ケアの質の評価に関する研究」第4 次調査の3 年目として調査票の送付と回収を行った。また終末期医療において課題となっている意思決定支援に関して簡便なプログラム開発に取り組み、開発ツールの原案を作成した。人材育成事業では、昨年に続き「Whole Person Care ワークショップ」のコースⅠ、Ⅱが開講され、Whole Person Care
のより深い学びが行われた。国際交流事業では、ホスピス財団 第2 回国際セミナーを開催した。また第2 期日本・韓国・台湾共同研究事業は最終年度となり、効率よく研究が遂行され多くの有意義なデータを蓄積することが出来た。その他各事業も計画通りに進められて、ご協力いただいている皆様方に深く感謝する。
 以下、個別の事業毎に実施報告の概要を記した。


【事業報告】

   
〔ホスピス・緩和ケアに関する調査・研究事業〕
1.  ホスピス・緩和ケアに関する調査研究事業(公募)
2.  遺族によるホスピス・緩和ケアの質の評価に関する調査研究事業
(第 4 次調査・3 年目)
3.  『ホスピス・緩和ケア白書 2019』(特集テーマの概説+データブック)
作成・刊行事業
4.  意思決定支援に関する背景・課題の整理と普及に関する検討
〔ホスピス・緩和ケア人材養成事業〕
5.  ホスピス・緩和ケアボランティア研修セミナー開催事業
6.  Whole Person Care ワークショップ開催事業
7.  グリーフケア研修セミナー開催事業
 8.  高齢者介護施設等の看取り教育研修(3年目)
 9.  『Whole Person Care:Transforming Healthcare』翻訳事業
10.  「ともいき京都」におけるがん体験者・市民主体のプログラム創生事業
11.  医療者の燃え尽き症候群防止プログラム
GRACE *1 普及のための指導者研修会開催事業
〔ホスピス・緩和ケアに関する普及、啓発事業〕
12.  『一般広報活動事業
13.  『これからのとき』『旅立ちのとき』冊子増刷
14.  ホスピス・緩和ケアフォーラム開催事業
〔ホスピス・緩和ケアに関する国際交流事業〕
15.  ホスピス財団 第2回 国際セミナー開催事業
16.  International Congress on Palliative Care 学会参加
17.  APHN 関連事業
18.  APHN 日本・韓国・台湾 第2 期共同研究事業(4年目)
  おわりに
             



[事業活動]

1.ホスピス・緩和ケアに関する調査研究事業(公募)

2018 年度の多施設共同研究として公募申請された5 件について、事業委員会において審査した結果、次の2 件が採択された。(公募制度13 年目)
 (1)わが国における小児緩和ケアチームの診療実態に関する多施設前向き観察研究
 (2)特別養護老人ホームに入居している認知症をもつ人の人生の最終段階におけるケアの満足度を
    測定するツールの開発




2.遺族によるホスピス・緩和ケアの質の評価に関する調査研究事業(第4次調査・3年目)

本事業は第1 回目(J-HOPE 1)を2006 年度~ 2008 年度、第二回目(J-HOPE2)を2009年度~ 2011 年度、第3 回目(J-HOPE3)を2012 年度~2015 年度に実施した。調査研究は主研究と付帯研究で構成され、世界的に大規模かつ質の高い研究として国際的にも評価されている。主研究では緩和ケアの質を評価し、その結果を各施設にフィードバックすることによりケアの質の改善を促すものである。第4 次調査(J-HOPE4)は、4 年計画で日本・韓国・台湾でのコホート共同研究と遺族調査を関連させて実施する計画であり、3 年目の2018 年度は調査票の送付と回収、およびデータ入力を実施した。



3.『ホスピス・緩和ケア白書 2019』(特集テーマの概説+データブック)作成・刊行事業

 『ホスピス緩和ケア白書』として、2018 年度版まで下記の15 冊を刊行・配布している。
 2019 年度版は、「ホスピス緩和ケアにおける看護…教育・制度の現状と展望を中心に」をテーマとした。

2004年 ホスピス緩和ケアの取り組みの概況
2005年 ホスピス緩和ケアの質の評価と関連学会研究会の紹介
2006年 緩和ケアにおける教育と人材の育成
2007年 緩和ケアにおける専門性~緩和ケアチームと緩和ケア病棟~
2008年 緩和ケアにおける医療提供体制と地域ネットワークの状況
2009年 緩和ケアの普及啓発・境域研修、臨床研究
2010年 緩和ケアにおけるボランティア活動とサポートグループの現状
2011年 がん対策基本法とホスピス緩和ケア
2012年 ホスピス・緩和ケアに関する統計とその解説
2013年 在宅ホスピス・緩和ケアの現状と展望
2014年 緩和ケアにおける専門医教育の現状と課題&
     学会・学術団体の緩和ケアへの取り組み
2015年 ホスピス・緩和ケアを支える専門家・サポーター
2016年 緩和デイケア・がん患者サロン・デイホスピス
2017年 小児緩和ケアの現状と課題
2018年 がん対策基本法の“これまで”と“これから”
2019年 ホスピス緩和ケアにおける看護
     …教育・制度の現状と展望を中心に
 




4.意思決定支援に関する背景・課題の整理と普及に関する検討

緩和ケアの普及や、高齢者の増加を背景に、意思決定に関しての知識の普及や実践の必要性が求められている。しかし、意思決定支援に関するニーズが高まる一方で、意思決定支援の方法について十分な情報がないのが実情である。本研究は、日常生活に関する意思決定能力を簡便に評価し、それに基づき簡便な支援の方針を確認できるプログラムの開発を目的とする。具体的には、医師や看護師、ソーシャルワーカーを対象に意思決定能力の判定方法、支援の実情、連携状況についてIn-depth interview を行った。
 インタビュー結果で、日常診療場面において、能力評価に沿った支援方法の検討がほとんど実施されていないことから、病棟看護師、ソーシャルワーカーの意見を踏まえつつ開発ツールの原案を構成した。現在、原案をベースにツールの信頼性、有用性の検討が進められている。




5.ホスピス・緩和ケアボランティア研修セミナー開催事業

 ホスピス・緩和ケアにおけるボランティアの役割を確認し、そのケアの向上をめざす研修セミナーは2002 年以来継続して日本病院ボランティア協会との共催で実施されている。従来は関西地区での開催が多かったが、地方での開催を求める声が多くあり、本年度は札幌市で開催した。

・実施日と場所:2018年6月8日(金)札幌市教育文化会館
・講師:清水 哲郎氏(岩手保健医療大学 学長)
    「エンドオブライフ・ケアにおける本人・家族の意思決定支援」
    中村 紀子氏(音楽療法士)
    「音で紡ぐ こころのメッセージ」~ホスピスの音楽療法士として
・参加者:122 名

ホスピス・緩和ケアボランティア研修セミナーの様子1   ホスピス・緩和ケアボランティア研修セミナーの様子2




6.Whole Person Care ワークショップ開催事業

 本ワークショップは2012 年より開催され、ホスピス・緩和ケアに従事する医師、看護師、薬剤師、ソーシャルワーカーなどのメディカルスタッフの育成を目的としたもので、従来の知識提供型ではなくグループワークを通じてWhole Person Care の学びを深めるものである。
 2018 年度は昨年と同様、コースⅠ、コースⅡを開催した。

・実施日:Whole Person Care ワークショップ・コースⅠ 2018年8月4日(土)
     Whole Person Care ワークショップ・コースⅡ 2018年8月5日(日)
・場 所:千里ライフサイエンスセンター(豊中市)
・講 師:恒藤 暁氏(京都大学大学院医学研究科)
     安田裕子氏(中京学院大学)
・参加者:コースⅠ 22 名 コースⅡ 21 名

Whole Person Care ワークショップの様子1   Whole Person Care ワークショップの様子2




7.グリーフケア研修セミナー開催事業
 ビリーブメント(死別)とそれに伴うグリーフ(悲嘆)に対する援助は、ホスピス・緩和ケアの領域のみならず、東日本大震災という未曽有の災害により大きな社会的関心事となりつつある。しかしながら、ビリーブメント体験についての理解や、死別者への援助手法に関して、わが国での学術的な貢献は、十分とはいえないのが現状である。このため当財団は、スピリチュアルケアへの貢献の一環として、この分野での基礎研究から臨床実践までを含めた学術的交流として「グリーフ&ビリーブメント カンファレンス」の開催を継続して実施してきた。本年、その交流会が発展し「日本グリーフ&ビリーブメント学会」として発足し、その総会においてシンポジウムが学会と共催で開催された。

・実施日:2019年2月24日(日)
・場 所:龍谷大学 大宮キャンパス 東黌(とうこう)
・シンポジウムテーマ: グリーフケアの実践と限界 
・参加者 約300 名
グリーフケア研修セミナーの様子_1   グリーフケア研修セミナーの様子_2



8.高齢者介護施設等の看取り教育研修(3年目)
 2025 年問題、すなわち団塊の世代が死を迎えることから、病院で看取りを行うのは設備的にも設備的にも困難で、今後は高齢者介護施設での看取りが必要となることから、高齢者介護施設を対象にした看取り教育プログラム開発は本財団が担うべきで事業と考え、2017 年度に介護施設職員(介護福祉士等を対象に看取りに関する意識、また阻害要因を明らかにする目的でWEB 調査と、インタビュー調査を行った。2018 年度は調査結果を日本緩和医療学会オンラインジャーナル“Palliative Care Research”へ投稿し、審査の結果2019 年2 月に採択された。一方、当初の目的である介護職への看取り研修教育プログラムの新規開発に関しては、近年多くの看取り教育に関する書籍、DVD 等が発行されホスピス財団がこの分野へ進出する意義が薄れてきていると思われたため、論文投稿を持って本事業を終了した。

日本緩和医療学会オンラインジャーナル“Palliative Care
Research に掲載された記事



9.『Whole Person Care:Transforming Healthcare』翻訳事業

 2016 年度に出版した『新たな全人的ケア』(Whole Person Care 日本語版)に続いて、そのシリーズとしてHutchinson 教授が執筆された『Whole Person Care: Transforming Healthcare』(Springer 社)の日本語版を出版し、Whole Person Care 事業の充実を図る。2018 年~ 2019 年度に翻訳を完了し、2020 年度の発行を計画している。

Whole Person Care:Transforming Healthcare の表紙



10.「ともいき京都」におけるがん体験者・市民主体のプログラム創生事業

がん体験者は、本来これまでの人生の過程で、潜在する生活の知恵、生きるための力を有しているが、がんという疾患に圧倒され戸惑う体験する。がん体験者の本来の知恵と力を引き出し、育む市民文化を根付かせていくためには、地域での新たな場の創生が不可欠である。
 このため2015 年4 月から、京都において、病院外で提供され、市民が気軽に利用でき、がん体験者と家族同士の触れ合い、語り合い、また専門家によるがん相談が受けられる、新たな地域コミュニティとして「ともいき京都」活動を開始した。これまでの活動実績から、地域での認知度が向上し当事業に対する信頼が醸成された。
 本年度は活動のさらなる質の向上を目指し、「ともいき京都」に関わるがん体験者と市民が主体となった新たな企画として、「ともいき京都」に関わるスタッフ(ボランティア)のケアの質向上のための教育研修を実施した。また、発足から3 年目を迎え年度であり、「3 周年記念イベント」を実施した。

・実施日時:1)「ともいき京都」:2018 年4 月〜 2019 年3 月各月2 回(第2・第4 金曜日)
      2)スタッフ(ボランティア)教育研修:2018 年5 月13 日(日)、11 月23 日(金)
      3)3 周年記念イベント
・場  所:1)風伝館(京都市中京区)
      2)京都大学杉浦地域医療研究センター
      3)京都カトリック教会河原町教会

「ともいき京都」の活動の様子




11.医療者の燃え尽き症候群防止プログラム
    GRACE *1 普及のための指導者研修会開催事業

 ホスピス緩和ケアに従事する医療者は多くのストレスを抱え、時に燃え尽き症候群につながることが大きな問題となっている。GRACE プログラムは、燃え尽き症候群を防止し、よりよきケアを提供するために構築された医療者向けプログラムである。今回このGRACE プログラムの指導者である、バック教授とラシュトン教授を招聘し、日本の医療現場においてGRACE トレーニングを指導できる人材を養成することを目的とする研修会を開催した。

*1:GRACE:Gathering attention Recalling intention Attuning to self and other
Considering what will serve Engaging, Enacting ,Ending
・実施日:2018 年6 月9 日(土)~ 10 日(日)
・場所:千里ライフサイエンスセンター ライフホール
・講師: アンソニー・バック教授(ワシントン大学医学部)、
     シンダ・ラシュトン教授(ジョン・ホプキス大学看護学部)




12.一般広報活動事業

 ホスピス・緩和ケアの普及・啓発活動のため、年2 回の『ホスピス財団ニュース』の発行を始め、ホームページの充実、更新その他必要に応じて財団のパンフレット改定・刊行などを行った。


ホスピス財団ニュース35号の表紙 ホスピス財団ニュース36号の表紙




13.『これからのとき』『旅立ちのとき』冊子増刷

 『これからのとき』は2006年の出版以来、遺族ケアの働きに用いられている。また、『旅立ちのとき』は2016年 8月に発行し、いずれも継続的に追加配布の要望が寄せられており、本年度は『これからのとき』を4000 部増刷した。

『これからのとき』、『旅立ちのとき』の表紙




14.ホスピス・緩和ケアフォーラム開催事業

 ホスピス・緩和ケアについての正しい理解を一般の方々へ広く啓発する目的で、財団設立以来継続して実施しており、講演とシンポジウムを軸としたプログラムである。2017 年度までに30 都市で開催した。2018 年度は、大分市で開催し、市民はじめ医療関係者等、多数の参加があった。

・実施日:2019 年2 月2 日(土)
・場 所:コンパルホール 文化ホール(大分市)
・講 演:山崎章郎氏(ケアタウン小平クリニック所長)
     テーマ「在宅緩和ケア」
・シンポジウム:テーマ「緩和ケアって何?」
・参加者:450 名
ホスピス・緩和ケアフォーラムの様子1   ホスピス・緩和ケアフォーラムの様子2




15.ホスピス財団 第2回 国際セミナー開催事業

 ホスピス・緩和ケアに関する、先進情報の入手することは、わが国におけるホスピス・緩和ケアの質の向上に寄与することから、海外より講師を招聘し、定期的に国際セミナー開催事業を行っている。2018 年度は、米国からRobert Macauley 氏を招聘して、東京と大阪でセミナーを開催した。

・実施日と場所
 東京 2018年6月30日(土)13:30 〜 18:30 品川インターシティホール 会議室
 大阪 2018年7月 1 日(日)13:00 〜 18:00 梅田スカイビル・スカイルーム
・テーマ:米国の緩和ケアにおける倫理的ジレンマ
・講師:Robert Macauley 氏(米国 オレゴン健康医学大学医学部 准教授)
・参加者:東京会場 48 名 大阪会場 48 名

ホスピス財団 第2回 国際セミナーの様子1   ホスピス財団 第2回 国際セミナーの様子2




16.International Congress on Palliative Care 学会参加

 カナダMcGill 大学のBalfour Mount 教授が創設し、隔年に開催される緩和ケアに関する国際会議であり、当財団から1 名が参加した。

・実施日:2018 年10 月2 日~ 5 日
・場 所:カナダ・モントリオール McGill 大学




17.APHN 関連事業

 当財団はシンガポールに本部を設置するAPHN(Asia Pacific Hospice Network)の会員として、当財団設立以来その活動を支援している。2018 年度は9 月にシドニーで開催されたAPHN 理事会に当財団より2 名が参加した。なお旅費に関しては他団体の負担で賄われた。

APHN(Asia Pacific Hospice Network)会員の方々




18.日本・韓国・台湾 第2期共同研究事業(4年目)

 緩和ケア病棟に入院している患者を対象としたコホート研究として、終末期がん患者の死にゆく過程の諸症状の変化や治療の効果を明らかにすることを目的として、研究が開始された。2016 年度は、韓国、台湾の研究者を招き、合同会議を行い、調査結果に基づいた具体的な研究内容を決定し、研究計画書を作成した。研究目的は、緩和ケア病棟に入院する終末期がん患者における終末期医療の実態の探索である。続いて研究対象とする患者登録を開始し、2017 年度以降も患者登録作業を継続し、日本国内では目標症例数の1600 名の登録を達成した。
 韓国・台湾でもそれぞれ407 名・333 名の登録を行い、2018 年度に3 国で計2636 名の患者データが収集された。また当初の予定通り、国内では登録患者のフォローを完了し、データの入力とクリーニングを実施した。2019 年3 月にはデータを固定し、主研究の解析を行うと同時に、付帯研究の整理を行い、論文を作成し、2019 年~ 2020 年に公表する予定である。
 また本研究は、遺族対象のJ-HOPE4 と一部データを連結することを予定している。




おわりに

 2018 年度は前述の18 事業を実施した。従来から継続して実施している事業に加え、終末期医療で課題となっている意思決定支援について調査研究を開始し、人材育成に関しても、Whole Person Care の新しい書籍の翻訳作業を開始した。また第2 次日・韓・台共同研究が完了したが、今後継続して、対象国を拡大して共同研究を行うことも検討されている。一方で、2025 年問題や多死時代と言われる中、当財団の果たすべき使命も今後は変化してくると思われる。来る2019 年度は、本年度の成果を踏まえつつ、時代のニーズに即した視点も加味し、当財団の独自性が発揮される調査・研究、人材育成事業を積極的に実施していきたい。