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(2011年7月1日~)
事業報告
2021年度 第22期事業報告書     (自:2021年4月1日 至:2022年3月31日)



[ご挨拶]

 平素より、ホスピス財団へのご理解とご支援を賜り、厚く感謝申し上げます。この度、『第22期(2021年4月1日~2022年3月31日)事業報告書』が完成しましたのでお届けいたします。
 当財団の主要な事業である「遺族によるホスピス・緩和ケアの質の評価に関する研究」は2年目となりました。さらに、当財団が力を注いでいる Whole Person Care に関して、日本 Whole Person Care 研究会が発足し、当財団と協調して、Whole Person Care のより一層の普及・啓発への足掛かりとなることが期待されております。これらの事業の実施にあたり、ご尽力とご協力を頂きました各位に深く感謝申し上げます。
 これからも公益財団法人として、ホスピス・緩和ケアの質の向上と、その普及・啓発に貢献することを願いつつ、事業活動を続けていく所存です。引き続き財団へのご支援とご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。
 末筆ながら、皆様のますますのご発展をお祈り申し上げます。

2022年6月
(公財)日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団
事業委員会・委員長  恒藤 暁


【事業報告】

            
   
〔ホスピス・緩和ケアに関する調査・研究事業〕
1.  ホスピス・緩和ケアに関する調査・研究事業(公募)
2.  遺族によるホスピス・緩和ケアの質の評価に関する調査研究事業
(第 5 次調査・2 年目)
3.  『ホスピス・緩和ケア白書 2022』(特集テーマの概説+データブック)
作成・刊行事業
4.  救急・集中治療における緩和ケアの推進(3年目)
〔ホスピス・緩和ケア人材養成事業〕
5.  ホスピス・緩和ケアボランティア研修セミナー開催事業
6.  Whole Person Care ワークショップ開催事業
 7.  『MD Aware:A Mindful Medical Practice Course Guide 』翻訳事業
 8.  日本 Whole Person Care 研究会開催事業
 9.  「ともいき京都」におけるがん体験者・市民主体のプログラム創生事業
 10.  緩和ケア・支持療法領域に関わる医療従事者を対象とした意思決定支援に関する
研修セミナーの開催
〔ホスピス・緩和ケアに関する普及、啓発事業〕
11.  ホスピス・緩和ケアフォーラム開催事業
12.  一般広報活動事業
13.  『これからのとき』『旅立ちのとき』冊子増刷
14.  ホスピス財団20周年記念講演会
〔ホスピス・緩和ケアに関する国際交流事業〕
15.  第4回国際 Whole Person Care 学会参加
16.  ホスピス財団 第4回 国際セミナー開催事業
17.  APHN関連事業
18.  日本・韓国・台湾・香港・シンガポール 第3期共同研究事業(3年計画の2年目)



[事業活動]

1.ホスピス・緩和ケアに関する調査・研究事業(公募)

2021年度の多施設共同研究として公募申請された9件について、事業委員会において審査した結果、次の2件が採択された。(公募制度17年目)
 (1)メサドンによる難治性がん疼痛治療に関する多施設共同前向き観察試験
    新型コロナウイルス感染症の影響で、当初の計画から研究倫理審査の承認が遅れたため、次年度へ継続
    となった。

 (2)痛緩和のための鎮静に関する法律上の問題に関する研究
新型コロナウイルス感染症のため2020年度採択されて、持ち越したが、新型コロナウイルス感染症の終息が見られないため、再度、次年度へ延期となった。



2.遺族によるホスピス・緩和ケアの質の評価に関する調査研究事業(第5次調査・2年目)

 本事業は第1回目(J-HOPE1)を2006年度~2008年度、第2回目(J-HOPE2)を2009 年度~2011年度、第3回目(J-HOPE3)を2012年度~2015年度、第4回目(J-HOPE4)を2016~2019年度に実施した。
 調査研究は主研究と付帯研究で構成され、世界的に大規模かつ質の高い研究として国際的にも評価されている。
 主研究では緩和ケア病棟のケアの質を評価し、その結果を施設にフィードバックすることによりケアの質の改善を促すものである。
 引き続き第5回目も、その内容をさらに充実させ、J-HOPE5として 4年間の調査研究事業を予定している。初年度の2020年は第5次調査のために研究の概要、スケジュールの検討会議と付帯研究説明会の開催および募集を行った。
 本年度は研究計画書、調査票の作成を行い、東北大学での倫理審査と参加施設での倫理審査を行う予定であったが、新型コロナウイルス感染症の影響で調査実施を当初の2022年度から2023年度に延期することになったので、   倫理審査の受審等も延期したため、進捗がほとんどなく、次年度へ繰り越すこととなった。
【2021 年度実施内容】
・調査および進捗スケジュールの変更
 



3.『ホスピス・緩和ケア白書 2022』(特集テーマの概説+データブック)作成・刊行事業

 『ホスピス緩和ケア白書』として、2021年度版まで18冊を刊行・配布している。 2022年度版は、特集テーマを以下の内容で2022年3月発行した。
①「緩和ケアチームにおける新たな試み」
②「緩和ケアに従事する人への新たな教育・研修
    ―セルフケア、マインドフルネスの視点から
 




4.救急・集中治療における緩和ケアの推進(3年目)

高齢化社会の進行に伴い、高齢者の救急搬送が増加する中、集中治療室満床により、生命維持治療を実施しながら転院を強いられることや、生命維持治療の中止、差し控えを行う例が増加している。しかし、その実態は明らかにされておらず、救急・集中治療領域においての基本的緩和ケア・専門的緩和ケアの双方とも十分な教育も実践も行われていない。本研究は、
1)わが国の救急・集中治療領域における緩和ケアと生命維持治療の中止・差し控えに関する実態とunmet needsを明らかにすること 
2)救急・集中治療領域において緩和ケアが必要な患者を効果的効率的に抽出することができるCase finding instrumentsを開発すること 
3)救急・集中治療領域における基本的緩和ケアのベスト・プラクティスを収集し、基準となる実践の手引きを開発すること 
4)救急・集中治療領域における基本的緩和ケアを実践するためのコミュニケーションスキルトレーニング法を開発することを目的として2019年度から調査研究を開始し、2019年度は事業会議を開催し、調査票の作成を行った。2020年度は、医師並びに看護師を対象とした質問し調査を実施し、我が国の救急集中治療領域における緩和ケアの実態を明らかにした。
 本年度は、2020年度に行った調査の内容を分析し、その結果について学会発表を行うとともに論文にまとめて投稿した。1 論文が受理され、1 論文が査読中である。また、2020年度に行った調査の結果から、わが国において、救急集中治療領域の緩和ケアの普及は初期段階にあり、啓発・普及必要性があると考えられた。また諸学会の協力を得て、救急集中治療領域の緩和ケアを推進するためのフォーラムの開催準備を行った。




5.ホスピス・緩和ケアボランティア研修セミナー開催事業

 ホスピス・緩和ケアにおけるボランティアの役割を確認し、そのケアの向上をめざすためのセミナーは2002年以来継続して日本病院ボランティア協会との共催で実施されきた。本セミナーは各地の病院ボランティアから地元での開催を希望する声も多く、開催地 が偏ることのないよう配慮している。
 昨年度は新型コロナウイルス感染症のため中止としたが、本年度は少人数参加による会場開催と、オンラインによる複合型で開催した。

・日 時 :2021 年 8 月 10 日(火)13 時 30 分~16 時
・場 所 :大阪社会福祉指導センター
・講 師 :宮川裕美子氏
・参加者 :99 名(会場 8 名  Web 91 名)



6.Whole Person Care ワークショップ開催事業

 本ワークショップは2012 年より開催され、ホスピス・緩和ケアに従事する医師、看護師、薬剤師、ソーシャルワーカーなどのメディカルスタッフの育成を目的としたもので、従来の知識提供型ではなくグループワークを通じてWhole Person Care の学びを深めるものである。
 2021年度は、コースⅠ、コースⅡを開催予定であったが、新型コロナウイルス感染症が終息しないため、再度中止とした。 



7.『MD Aware:A Mindful Medical Practice Course Guide 』翻訳事業
 2016年度に出版した『新たな全人的ケア』(Whole Person Care 日本語版)、また2020年度に出版した『Whole Person Care 実践編』(Whole Person Care : Transforming Healthcare日本語版)に続き、その教育編として出版を計画し、本年度は翻訳作業および、制作作業を実施し、3月発刊した。

 ・書 名:Whole Person Care 教育編
 ・訳 者:恒藤 暁氏、土屋静馬氏、三好智子氏
 ・出版元:三輪書店
 ・発 売:ホスピス財団
 ・売 価:2000 円(税別)




8.日本Whole Person Care 研究会開催事業
 ホスピス財団は,2012年より事業の柱の一つとしてWhole Person Care の啓発・普及に取り組んでおり,Whole Person Care の国際セミナーやワークショップを開催している。今後Whole Person Care を より広く普及させるため、2020年8月1日に日本 Whole Person Care 研究会が発足した。
 同研究会はホスピス財団と密に連携を図りながら,Whole Person Care の更なる普及・啓発の活動を進める予定である。 第1回研究会は 2020年8月1日、第2回研究会は 2020年11月28日にオンラインで開催され、2021年3月 13日には第3回研究会が開催された。参加者は,医師,看護師,薬剤師など医療従事者,教育関係者,学生など多岐にわたっている。2021年度は、会場を設けて対面での研究会を予定していたがコロナの影響により、第4回は対面とWeb のハイブリッド方式で、第5回は Web にて開催した。


 ・第4回 日本 Whole Person Care 研究会 2021年8月7日(土) 会場:富山大学&Web
 ・第5回 日本 Whole Person Care 研究会 2022年3月12日(土) Web




9.「ともいき京都」におけるがん体験者・市民主体のプログラム創生事業
 2015年より活動を開始した「ともいき京都」は、がんを体験した人が、生きる力を発揮して知恵を育み、周りのいのちと共に生き、支え合うネットワークづくりをミッションに、
①病院外で提供され、
②市民が気軽に利用でき、
③がん体験者と家族同士の語り合い、
④専門家によるがん相談が受けられる地域コミュニティの場として定期的な開催(2回/月)を継続してきた。
 2020年度は、ともいき京都に継続して参加している参加者にインタビュー調査を実施し、「自分のことを分かってくれていると感じ、信頼関係に自信がつき、人を受け入れられるようになる」「病気になっても、心まで病気になってはいけないと思えるようになる」「自分の考えはそれでよかったと確認することができる」という語りが得られ、この活動が参加者の周囲の人との関係の再構築、自尊感情の回復等に役立つ可能性が示唆された。
 2020年度は、新型コロナウイルス感染症のため会場が使用できず、Facebook、LINE 等のソーシャルメディアを活用し、がん体験者・市民に「がんとともに生き抜く知恵」を発信し続けた。さらに対面と同様の臨場感を持って参加できるようオンラインでのライブ配信を行い、2020年11月23日にはともいき京都5周年を記念し、ライブ配信にてオンラインイベントを開催した。
 2021年度も同様にオンラインを中心に実施した。オンラインとなったことで、近隣だけでなく全国の体験者との交流へ発展している。

・実施日:
1)ともいき京都ワークショップ・対話(オンライン):
  2021年4月〜2022年3月 各月2回(第 2・第 4 金曜日) 14:30〜16:15、計24回
2)ともいき京都スタッフ教育研修(オンライン):2022年3月開催

・ 開催場所:
1)風伝館(京都市中京区烏丸通押小路上ル秋野々町 535 番地) 上限 8 名
2)各自所属施設および自宅



10. 緩和ケア・支持療法領域に関わる医療従事者を対象とした
   意思決定支援に関する研修セミナーの開催

 高齢者の増加や緩和ケアの普及を背景に、エンドオブライフにおいて、本人の意思を適切に反映するための支援の必要性が指摘されている。特にアドバンス・ケア・プランニング(ACP)の普及が求められる中で、緩和ケアの経験や実践が、より広く社会に貢献することが期待されている。
 しかし、意思決定支援に関するニーズが高まる一方、支援に関する議論がかみ合わずにいる問題もあり、意思決定支援の必要性が認識されつつあるものの、医療の領域にはまだ十分に情報が行き渡っていないのが現状である。そのため2019年度に、意思決定支援に関する知識と支援方法に関して、講義とグループワークを用いて系統的に解説するセミナーを開催したところ予想外の反響があった。
 2020 年度は、新型コロナウイルス感染症のため中止とした。さらに本年度も新型コロナウイルス感染症のため再度延期とした。

(当初予定)
・日 時 :2021 年 10 月
・場 所 :関西地区
・対 象: 緩和ケアに携わる医療従事者等
     (医師、看護師、医療ソーシャルワーカー、ケアマネージャー、行政職等)
・予定対象者数:100名
  内容:(1)意思決定支援の概要解説
     (2)意思決定能力のアセスメント方法
     (3)意思決定で生じるバイアスとその対応(行動経済学による観点)
     (4)支援ツールの紹介
     (5)グループワーク(多職種による支援に関する事例を用いた検討)



11.ホスピス・緩和ケアフォーラム開催事業

ホスピス・緩和ケアについての正しい理解を一般の方々へ広く啓発する目的で、財団設立以、全国各地で継続して実施している講演とシンポジウムを軸としたプログラムである。
 2019年度までに32都市で開催した。2020年度は、松山市で、第44回日本死の臨床研究会年次大会の市民公開講座として実施する予定であったが、新型コロナウイルス感染症のため中止とした。2021 年度はオンラインでの開催も可能として再募集した結果、第45回日本死の臨床研究会年次大会(Web)の市民公開講座として、福岡にてWeb 開催した。

・日 時:2021年12月5日(日)14 時~15 時
・「死と共存する笑いの世界」~落語ではいつも誰かが死んでいる~」
・演 者:落語家 三遊亭竜楽氏 司会:小杉 寿文氏




12.一般広報活動事業

 ホスピス・緩和ケアの普及・啓発活動のため、年2回の『ホスピス財団ニュース』の発行を始め、ホームページの充実、更新その他必要に応じて財団のパンフレット改定・刊行などを行った。


ホスピス財団ニュース39号の表紙 ホスピス財団ニュース40号の表紙




13.『これからのとき』『旅立ちのとき』冊子増刷

 『これからのとき』は2006年の出版以来、遺族ケアの働きに用いられている。また、『旅立ちのとき』は2016年8月に発行し、いずれも継続的に配布の要望が寄せられており、必要に応じて増刷を行った。


『これからのとき』、『旅立ちのとき』の表紙




14.ホスピス財団20周年記念講演会

 昨年は新型コロナウイルス感染症のため延期となったホスピス財団設立20周年講演会を、本年度はWeb にて開催した。

・実施日:2021年10月2日(土)14時から15時30分
・場 所:ホスピス財団事務所
・講 師:柏木哲夫氏、恒藤 暁氏  
・参加者:102名
ホスピス財団20周年記念講演会のサムネイル画像




15.第4回国際 Whole Person Care 学会参加

 カナダ・モントリオールのMcGill 大学にて隔年で開催される、国際 Whole Person Care 学会への参加は、ホスピス財団の Whole Person Care 教育プログラムを推進、発展させるために有用であり、1~2名の参加を予定していたが、新型コロナウイルス感染症の影響で Web 開催となり、Web にて参加した。

・実施日:2021年10月22日〜24日(Web 開催)
・場 所:McGill 大学




16.ホスピス財団 第4回 国際セミナー開催事業

 ホスピス・緩和ケアに関する、先進情報を入手することは、わが国におけるホスピス・緩和ケアの質の向上に寄与することから、海外より講師を招聘し、定期的に国際セミナー開催事業を行っている。
 2021年度は、昨年延期となった、カナダの McGill 大学の Whole Person Care プログラムで中心的に活動されているHutchinson 教授を迎え、「Whole Person   Care 対話型ワークショップ」をWeb にて開催した。

 ・実施日:2021年11月27 日(土) 13時30分~16時30分
      講演 1「混沌とした世界における癒しの過程」
          “The Process of Healing in a Chaotic Universe”
      講演 2「Whole Person Care と医療のアート」
          “Whole Person Care and the Art of Medicine”
      講 師: Tom .A. Hutchinson 氏(McGill 大学医学部教授)
      解 説: 恒藤 暁氏、土屋静馬氏、三宅智子氏

Hutchinson 教授講演のオープニング画像




17.APHN関連事業

 当財団はシンガポールに本部を設置する APHN(Asia Pacific Hospice Palliative Care Network)の会員として、当財設立以来、アジア太平洋地域のホスピス緩和ケアの普及と発展のため、その活動への協賛と支援を行っている。
 2021 年度は神戸にて開催された第14回アジア太平洋ホスピス緩和ケア大会(Web 開催)に運営費および HINOHARA MEMORIAL LECTURE 協力費として協賛した。


・実施日:2021年11月13日(金)~ 15日(日)




18.日本・韓国・台湾・香港・シンガポール 第3期共同研究事業(3年計画の3年目)

 2017年に欧州緩和ケア学会(EAPC)からACPの定義と推奨に関して国際的な専門家の合意が発表されたが、個人の自律性と同時に患者、家族の和を重んじる儒教文化の残るア ジア諸国には必ずしもそぐわないような項目も含まれ、アジアにおけるACPの望ましい在り方に関しては、国際的にも合意が得られていない。
 本研究の主目的は、日本・韓国・ 台湾・香港・シンガポールの ACP の専門家の間で、これら5か国に適切な ACP の定義と推奨の国際合意を得ることである。
 初年度の2019年度は、5か国の多職種で構成される国際的なACPの専門家により、本研究のタスクフォースを組織し、APHNとも連携し、系統的レビューと研究者間の協議を通して、ACP の定義、推奨項目について、EAPC の項目をたたき台にしつつ、アジアの文化に照らし合わせて大幅な加除修正を行った。その結果アジアでは患者・家族等両者の関与が重要であること、法制化や指針作りの必要性が唱えられていることが明らかになった。
 2020年度は、上記の知見に基づき、アジア5カ国に適した ACP の草稿として、最終的に、ACP の定義 2 項目(拡張版、短縮版)・推奨 51 項目を作成した。また、デルファイ調査の準備、専門パネルの選定を行い、Web 調査を実施し、計63名(日本 19 名、韓国 19 名、台湾 14 名、香港 11 名)から回答を得た。
 2021 年度は、主として定期的にテレビ会議を開催し、Web 調査結果から草稿の加除修正および翻訳作業を行い、修正版を作成した。