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(2011年7月1日~)
事業報告
2020年度 第21期事業報告書     (自:2020年4月1日 至:2021年3月31日)



[ご挨拶]

 新型コロナウイルス問題が長引く中、困難な状況におられる方々には、心よりお見舞い申し上げますと共に、医療従事者の献身的な働きにも敬意を表します。また平素より、ホスピス財団へのご理解とご支援を賜り、厚く感謝申し上げます。この度、『第21期(2020年4月1日~2021年3月31日)事業報告書』が完成しましたのでお届けいたします。
 当財団は2000年12月に設立され、2011年4月には公益認定を受け、現在に至っておりますが、2020年度は、新型コロナウイルス問題の影響を受け、従前とは異なる事業展開となり、当初に計画しておりました事業のいくつかは、延期や中止とせざるを得ない年となりました。
 このような環境下ではありましたが、当財団の主要な事業である「遺族によるホスピス・緩和ケアの質の評価に関する研究」は新たに第5次調査が開始されました。また昨年度から開始された「救急・集中治療における緩和ケアの推進」では、医師並びに看護師を対象とした調査を実施し、救急集中治療領域における緩和ケアの必要性が示唆されました。さらに、当財団が力を注いでいる Whole Person Care に関して、日本 Whole Person Care 研究会が発足し、当財団と協調して、Whole Person Care のより一層の普及・啓発への足掛かりとなることが期待されております。このほか、がん患者とその家族への支援活動である「ともいき京都」は WEB を活用して遂行することが出来ました。これらの事業の実施にあたり、ご尽力とご協力を頂きました各位に深く感謝申し上げます。
 新型コロナウイルス問題の先が見えない中ではありますが、WEB の活用も視 野に入れ、これからも公益財団法人として、ホスピス・緩和ケアの質の向上と、その普及・啓発に貢献することを願いつつ、事業活動を続けていく所存です。引き続き財団へのご支援とご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。
 末筆ながら、皆様のますますのご発展をお祈り申し上げます。

2021年6月
(公財)日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団
事業委員会・委員長  恒藤 暁


【事業報告】

   
〔ホスピス・緩和ケアに関する調査・研究事業〕
1.  ホスピス・緩和ケアに関する調査・研究事業(公募)
2.  遺族によるホスピス・緩和ケアの質の評価に関する調査研究事業
(第 5 次調査・1 年目)
3.  『ホスピス・緩和ケア白書 2021』(特集テーマの概説+データブック)
作成・刊行事業
4.  救急・集中治療における緩和ケアの推進
〔ホスピス・緩和ケア人材養成事業〕
5.  ホスピス・緩和ケアボランティア研修セミナー開催事業
6.  Whole Person Care ワークショップ開催事業
 7.  『MD Aware:A Mindful Medical Practice Course Guide 』翻訳事業
 8.  「ともいき京都」におけるがん体験者・市民主体のプログラム創生事業
 9.  緩和ケア・支持療法領域に関わる医療従事者を対象とした意思決定支援に関する
研修セミナーの開催
〔ホスピス・緩和ケアに関する普及、啓発事業〕
10.  ホスピス・緩和ケアフォーラム開催事業
11.  一般広報活動事業
12.  『これからのとき』『旅立ちのとき』冊子増刷
13.  ホスピス財団20周年記念講演会
〔ホスピス・緩和ケアに関する国際交流事業〕
14.  International Congress on Palliative Care 学会参加
15.  ホスピス財団 第4回 国際セミナー開催事業
16.  APHN関連事業
17.  日本・韓国・台湾・香港・シンガポール 第3期共同研究事業(3年計画の2年目)
  おわりに
             



[事業活動]

1.ホスピス・緩和ケアに関する調査・研究事業(公募)

2020年度の多施設共同研究として公募申請された9件について、事業委員会において審査した結果、次の4件が採択された。(公募制度15年目)
 (1)沖縄・東北・東京における緩和ケアの地域差に関する研究

 (2)苦痛緩和のための鎮静に関する法律上の問題に関する研究
新型コロナウイルス感染症防止ため対面での実施が難しく、次年度へ繰り越すこととした。
2020年度は、新型コロナウイルス感染症の影響で、調査研究事業、人材育成事業、普 及・啓発事業および国際交流事業の4領域で当初は17事業を計画していたが、7事業が中止または延期となった。
調査・研究事業では、継続して実施している大規模な調査研究「遺族によるホスピス・緩和ケアの質の評価に関する研究」第5次調査が始まった。また「救急集中治療における緩和ケアの推進」は2年目となり具体的な調査が行われた。人材育成事業では、日本Whole Person Care研究会が当財団と協調して発足された。国際交流事業では第3期となる「日本・韓国・台湾・香港・シンガポール共同研究事業」が継続して実施された。ご協力いただいている皆様方に深く感謝する。
 以下、個別の事業毎に実施報告の概要を記した。

 (3)死亡診断時の医師の立ち居振る舞いに関するコンピテンシー(能力・知識・技 術・態度)
     の確立

 (4)緩和ケア領域のランダム化比較試験に対するがん患者・家族の意向に関する大規模調査



2.遺族によるホスピス・緩和ケアの質の評価に関する調査研究事業(第5次調査・1年目)

 本事業は第1回目(J-HOPE1)を2006年度~2008年度、第2回目(J-HOPE2)を2009 年度~2011年度、第3回目(J-HOPE3)を2012年度~2015年度、第4回目(J-HOPE4) を2016~2019年度に実施した。調査研究は主研究と付帯研究で構成され、世界的に大規模かつ質の高い研究として国際的にも評価されている。主研究では緩和ケア病棟のケアの質 を評価し、その結果を施設にフィードバックすることによりケアの質の改善を促すもので ある。引き続き第5回目も、その内容をさらに充実させ、4年間の調査研究事業を予定し ている。初年度の2020年は第5次調査のための研究の概要、スケジュールの検討会議を行い、また付帯研究説明会の開催と募集を行った。  



3.『ホスピス・緩和ケア白書 2021』(特集テーマの概説+データブック)作成・刊行事業

 『ホスピス緩和ケア白書』として、2020年度版まで下記の17冊を刊行・配布している。 2021年度版は、「緩和ケアとリハビリテーション」を特集テーマとして発行した。

2004年 ホスピス緩和ケアの歩み、実態、方向性
2005年 ホスピス緩和ケアの質の評価と関連学会研究会の紹介
2006年 緩和ケアにおける教育と人材の育成
2007年 緩和ケアにおける専門性~緩和ケアチームと緩和ケア病棟~
2008年 緩和ケアにおける医療提供体制と地域ネットワークの状況
2009年 緩和ケアの普及啓発・境域研修、臨床研究
2010年 緩和ケアにおけるボランティア活動とサポートグループの現状
2011年 がん対策基本法とホスピス緩和ケア
2012年 ホスピス・緩和ケアに関する統計とその解説
2013年 在宅ホスピス・緩和ケアの現状と展望
2014年 緩和ケアにおける専門医教育の現状と課題&
     学会・学術団体の緩和ケアへの取り組み
2015年 ホスピス・緩和ケアを支える専門家・サポーター
2016年 緩和デイケア・がん患者サロン・デイホスピス
2017年 小児緩和ケアの現状と課題
2018年 がん対策基本法の“これまで”と“これから”
2019年 ホスピス緩和ケアにおける看護:
     教育・制度の現状と展望を中心に
2020年 心不全の緩和ケア
2021年   緩和ケアとリハビリテーション(2021年3月発行)
 




4.救急・集中治療における緩和ケアの推進

高齢化社会の進行に伴い、高齢者の救急搬送が増加する中、集中治療室満床により、生命維持治療を実施しながら転院を強いられることや、生命維持治療の中止、差し控えを行う例が増加している。しかし、その実態は明らかにされておらず、救急・集中治療領域においての基本的緩和ケア・専門的緩和ケアの双方とも十分な教育も実践も行われていない。本研究は、
1)わが国の救急・集中治療領域における緩和ケアと生命維持治療の中止・差し控えに関する実態とunmet needsを明らかにすること 
2)救急・集中治療領域において緩和ケアが必要な患者を効果的効率的に抽出することができるCase finding instrumentsを開発すること 
3)救急・集中治療領域における基本的緩和ケアのベスト・プラクティスを収集し、基準となる実践の手引きを開発すること 
4)救急・集中治療領域における基本的緩和ケアを実践するためのコミュニケーションスキルトレーニング法を開発することを目的として2019年度から調査研究を開始し、2019年度は事業会議を開催し、調査票の作成を行った。2020年度は、医師並びに看護師を対象とした質問し調査を実施し、我が国の救急集中治療領域における緩和ケアの実態を明らかにした。




5.ホスピス・緩和ケアボランティア研修セミナー開催事業

 ホスピス・緩和ケアにおけるボランティアの役割を確認し、そのケアの向上をめざすためのセミナーは2002年以来継続して日本病院ボランティア協会との共催で実施されきた。本セミナーは各地の病院ボランティアから地元での開催を希望する声も多く、開催地 が偏ることのないよう配慮している。
 本年度は中国開催を予定していたが、新型コロナウイルス感染症防止から中止とした。

(当初予定)
・実施日と場所:2020年8月29日(土)広島市YMCA会館
・講 師:徳永 進氏(野の花診療所院長)



6.Whole Person Care ワークショップ開催事業

 本ワークショップは2012 年より開催され、ホスピス・緩和ケアに従事する医師、看護師、薬剤師、ソーシャルワーカーなどのメディカルスタッフの育成を目的としたもので、従来の知識提供型ではなくグループワークを通じてWhole Person Care の学びを深めるものである。
 2020年度は昨年と同様、コースⅠ、コースⅡを開催予定であったが、新型コロナウイルス感染症防止から中止とした。

(当初予定)
・実施日:Whole Person Care ワークショップ・コースⅠ  2020年9月5日(土)
     Whole Person Care ワークショップ・コースⅡ 2020年9月6日(日)
・場 所:大阪コロナホテル
・講 師:恒藤 暁氏(京都大学大学院医学研究科)
     安田裕子氏(中京学院大学)
・参加者:各コースⅠ 30 名
・参加費:各コース   15000円(賛助会員は10000円)



7.『Whole Person Care:Transforming Healthcare』翻訳事業
 2016年度に出版した『新たな全人的ケア』(Whole Person Care 日本語版)、また2019年度に出版予定の『Whole Person Care 実践編』(Whole Person Care : Transforming Healthcare日本語版)に続き、その教育編として2021年度に出版を計画している。本年度は、SPRINGER社と契約を取り交わした。翻訳作業は進捗が遅れているため、次年度へ 継続とした。

 タイトル:「Whole Person Care 教育編(仮) 
 訳  者:土屋静馬氏、三好智子氏、恒藤暁氏
 出  版 元:三輪書店  売価:2000円(税別)




8.「ともいき京都」におけるがん体験者・市民主体のプログラム創生事業
 京都を中心としたがん患者のアドボカシ(権利擁護)活動である「ともいき京都」の取り組みは、月に2回の定期的な開催時には1回平均18.4名の参加者と定着してきている。
(1)病院外で提供され
(2)市民が気軽に利用でき
(3)がん体験者と家族同士の触れ合い、語り合い
(4)専門家によるがん相談が受けられる地域コミュニティの地域コミュニティの場として認知されるようになってきている。また、体験者へのインタビューでは、利用者同士が支え合い、能動的にがんと共に生きるための知恵や力を育む場所として位置づけされていることも確認された。
 2020年度は、新型コロナウイルス感染症拡大により2020年3-5月プログラム開催会場である風伝館が使用できず、 対面での開催中止を余儀なくされた。 その間、HPやFacebook、LINE等のソーシャルメディアを活用し、がん体験者・市民に「がんとともに 生き抜く知恵」をスタッフ(がん体験者、医療従事者、セラピスト、市民)が一丸となっ て発信し続けた。同時に、ともいき京都の中心的な活動である「生きる知恵を育むワー   ク」と「生きることへ向き合う語り合い」を対面と同様の臨場感を持って参加できるよう オンラインでのライブ配信を準備し、9月には安定した配信ができるようシステムを整えた。
 11月23日に公開シンポジウムと共催したともいき京都5周年記念イベントにおいても、完全オンラインにてライブ配信を行い約150の視聴回数を得た。

実施日:
1)「ともいき京都」:2020年4月~2021年3月    WEBを活用して実施
2)  5周年記念大会 :2020年11月23日  ONLINEによるLIVE配信

「ともいき京都」が開催されている会場の入り口の様子   「ともいき京都」の集会の様子



9. 緩和ケア・支持療法領域に関わる医療従事者を対象とした意思決定支援に関する研修セミナーの開催

 高齢者の増加や緩和ケアの普及を背景に、エンドオブライフにおいて、本人の意思を適切に反映するための支援の必要性が指摘されている。特にアドバンス・ケア・プランニング(ACP)の普及が求められる中で、緩和ケアの経験や実践が、より広く社会に貢献することが期待されている。
 しかし、意思決定支援に関するニーズが高まる一方、支援に関する議論がかみ合わずにいる問題もあり、意思決定支援の必要性が認識されつつあるものの、医療の領域にはまだ十分に情報が行き渡っていないのが現状である。そのため昨年度に、意思決定支援に関する知識と支援方法に関して、講義とグループワークを用いて系統的に解説するセミナーを開催したところ予想外の反響があった。
 そこで、本年度も続けてセミナーを開催し、ACPの普及と人材育成を図ると共に、セミナー内容のフィードバックを受け、教材開発を進めることを目指していたが、新型コロナウイルス感染症防止から中止とし、次年度に再度、事業化を考えている。

(当初予定)
・実施予定日・場所:2020年8月後半(予定)    場所未定
・対 象: 緩和ケアに携わる医療従事者等
     (医師、看護師、医療ソーシャルワーカー、ケアマネージャー、行政職等)
・予定対象者数:100名
  内容:(1)意思決定支援の概要解説
     (2)意思決定能力のアセスメント方法
     (3)意思決定で生じるバイアスとその対応(行動経済学による観点)
     (4)支援ツールの紹介
     (5)グループワーク(多職種による支援に関する事例を用いた検討)



10.ホスピス・緩和ケアフォーラム開催事業

ホスピス・緩和ケアについての正しい理解を一般の方々へ広く啓発する目的で、財団設立以、全国各地で継続して実施している講演とシンポジウムを軸としたプログラムである。
 2019年度までに32都市で開催した。2020年度は、松山市で、第44回日本死の臨床研究会年次大会の市民公開講座として実施する予定であったが、新型コロナウイルス感染症防止から中止とし、2023年度へ延期の予定である。

(当初予定)
・実施予定日:2020年10月18日(日)
・場 所:愛媛県県民文化会館メインホール
・テーマ:四国遍路が育んできた生と死の文化
・講 師:山折哲雄氏(宗教学者、評論家)
     黒田仁朗氏(クリエイティブ  プロデューサー)
・コーディネーター:中橋     恒氏(松山べテル病院院長)




11.一般広報活動事業

 ホスピス・緩和ケアの普及・啓発活動のため、年2回の『ホスピス財団ニュース』の発行を始め、ホームページの充実、更新その他必要に応じて財団のパンフレット改定・刊行などを行った。


ホスピス財団ニュース39号の表紙 ホスピス財団ニュース40号の表紙




12.『これからのとき』『旅立ちのとき』冊子増刷

 『これからのとき』は2006年の出版以来、遺族ケアの働きに用いられている。また、『旅立ちのとき』は2016年8月に発行し、いずれも継続的に配布の要望が寄せられてお り、必要に応じて増刷を行った。


『これからのとき』、『旅立ちのとき』の表紙




13.ホスピス財団20周年記念講演会

 ホスピス財団設立20周年を記念して、賛助会員、医療従事者、一般市民等を対象にホスピス緩和ケアを、より深く知っていただくための講演会を開催する予定であったが、新型コロナウイルス感染症防止から中止し、次年度へ延期とした。

(当初予定)
・実施予定日:2020年9月18日(金)
・場所:千里ライフサイエンスセンター
・講師:柏木哲夫氏、Tom A. Hutchinson氏   
・音楽ゲスト:井草聖二氏(ギタリスト)




14.International Congress on Palliative Care 学会参加

 カナダ・    モントリオールのMcGill大学にて隔年で開催されている本国際学会への参加は、ホスピス緩和の最新の研究成果や、他国の動向等を学ぶ機会として極めて有用であるため、当財団より1名の参加を予定であったが、新型コロナウイルス感染症防止から中止となった。

(当初予定)
・実施予定日:2020年10月13日(火)~16日(金)
・場所:カナダ・モントリオール




15.ホスピス財団 第4回 国際セミナー開催事業

 ホスピス・緩和ケアに関する、先進情報を入手することは、わが国におけるホスピス・緩和ケアの質の向上に寄与することから、海外より講師を招聘し、定期的に国際セミナー開催事業を行っている。
 2020年度は、カナダの McGill 大学の Whole Person Care プログラムで中心的に活動されているHutchinson 教授を迎え、「Whole Person   Care 対話型ワークショップ」を開催予定であったが、新型コロナウイルス感染症防止から次年度へ延期とした。

(当初予定)
・実施予定日と場所
 大阪 2020年9月19日(土)13:30~18:30  千里ライフサイエンスセンター
 東京 2020年9月20日(日)13:00~18:00  品川インターシティ会議室
・テーマ:Care;結びつき、気づき、関わり、専心する
・講  師:Tom .A. Hutchinson 氏(McGill大学医学部教授)




16.APHN関連事業

 当財団はシンガポールに本部を設置するアジア太平洋ホスピス緩和ケアネットワーク(APHN)(Asia Pacific Hospice Palliative Care Network: APHN)の会員として、当財設立以来、アジア太平洋地域のホスピス緩和ケアの普及と発展のため、その活動への協賛と支援を行っている。
 2020 年度は7月にシンガポールで開催予定のAPHN Annual General Meeting 2020に参加予定であったが、WEB開催となり、WEBでの参加となった。

・実施日:2020年8月25日(火)18時~    ZOOM にて開催

ASIA PACIFIC HOSPICE PALLIATIVE CARE NETWORK Web 開催チラシの表紙




17.日本・韓国・台湾・香港・シンガポール 第3期共同研究事業(3年計画の2年目)

 2017年に欧州緩和ケア学会(EAPC)からACPの定義と推奨に関して国際的な専門家の合意が発表されたが、個人の自律性と同時に患者、家族の和を重んじる儒教文化の残るア ジア諸国には必ずしもそぐわないような項目も含まれ、アジアにおけるACPの望ましい在り方に関しては、国際的にも合意が得られていない。
 本研究の主目的は、日本・韓国・ 台湾・香港・シンガポールの ACP の専門家の間で、これら5か国に適切な ACP の定義と推奨の国際合意を得ることである。
 初年度の2019年度は、5か国の多職種で構成される国際的なACPの専門家により、本研究のタスクフォースを組織し、APHNとも連携し、質的調査を行い、ACP の定義、推奨項目について、EAPC の項目をたたき台にしつつ、アジ アの文化に照らし合わせて大幅な加除修正を行った。
 その結果アジアでは患者・家族等両 者の関与が重要であること、法制化や指針作りの必要性が唱えられていることが明らかに なった。
 2020年度は、上記の知見に基づき、アジア5か国に適した ACP の草稿として、 最終的に、ACP の定義2項目(拡張版、短縮版)・推奨51項目を作成した。また、デルファイ調査の準備、専門パネルの選定を行い、WEB調査を実施し、計63名(日本19名、韓 国19名、台湾14名、香港11名)から回答を得た。




おわりに

 2020年度は前述の通り、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、会場を使用しての対面での開催ができないことなどから、11事業の実施に留まった。
 しかし、次年度は WEB を活用してのセミナーなども計画されており、超高齢社会の到来で益々必要性が求められている意思決定支援、救急集中治療における緩和ケアの推進など、質の高い調査・研究や人材育成事業を実施したいと願っている。