■Module18■ 家族ケアとグリーフケア
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〔一般問題〕
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問題1 |
家族ダイナミクスを理解するうえで必要なアセスメント項目の中でふさわしくないものはどれか |
(1) |
家族全体の発達課題は何か |
(2) |
家族内の役割分担は罹患前後でどのように変化したか |
(3) |
家族内で意思決定はどのようになされているか |
(4) |
家族員それぞれがどのような悩みを抱えているか |
(5) |
過去の危機に対して,家族がどのように対処してきたか |
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問題2 |
初診の時点で,患者・家族間のコミュニケーションスタイルを把握し,理解をするための方法としてふさわしいものを選べ |
(1) |
「気持ちについて」の話が家族内でどのように話し合われているかを尋ねる |
(2) |
家族内では誰が口火を切るか,誰がよく話をするかに注意する |
(3) |
病状や予後については誰に対して説明してもらいたいかを尋ねる |
(4) |
家族がストレスにどのように反応するかを見るために,まず厳しい病状を伝える |
(5) |
「普段どのようなことが家族の問題として話されていますか」と尋ねる |
a(1),(2) b(1),(5) c(2),(3) d(3),(4) e(4),(5) |
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問題3 |
コーピングのスタイルについての説明のうち正しい組み合わせを選べ |
(1) |
コーピングはストレス要因に対する意識的な働きかけである |
(2) |
否認や回避は,病気や死と向き合うことを妨げるので介入が必要である |
(3) |
病気と戦うという姿勢を維持することがコーピングにはまず必要である |
(4) |
コーピングはその人の過去の問題解決経験から培われたもので,病状の進行には影響を受けない |
(5) |
家族や友人に心配事を話したり,病状について詳しく知ろうとするのもコーピングとして有用である |
a(1),(2) b(1),(5) c(2),(3) d(3),(4) e(4),(5) |
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問題4 |
家族との面談についての説明のうち正しい組み合わせを選べ |
(1) |
家族との面談は患者の病状を家族がどの程度理解しているかを知り,患者のケアについて 家族がどのような希望を持っているかを把握するために行う |
(2) |
家族内に対立がある場合,その対立に苦しむのは患者であるから,その対立がなくなるま で家族との面談を行う |
(3) |
患者とは話しにくい心肺蘇生や鎮静などについて,家族が患者の代わりに決められるよう 支援するのも家族との面談が果たす役割である |
(4) |
患者だけでなく,家族もケアの対象であることを示すためにも家族との面談は毎週行うこ とが大切である |
(5) |
患者と家族とで病状やの理解や予後の見通しが異なる場合,何が理由なのか,それは修正 可能なのかを知るために,家族との面談は有用である |
a(1),(2) b(1),(5) c(2),(3) d(3),(4) e(4),(5) |
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問題5 |
次の選択肢のうち死別を体験した人のサポートとしてふさわしいと考えられる組み合わせはどれか |
(1) |
故人を失った心の痛みを早く癒すためには,故人のいない生活に早く適応するために形見分けなどを早く行って故人のものを整理することを支援する |
(2) |
故人が亡くなって1年たっても,悲しみが癒えないのは病的悲嘆であるから,精神科を受診することを勧める |
(3) |
悲嘆が癒えるための時間は人によりさまざまであるので,その人なりのペースで故人の死を認め,乗り越えていくのがいいと支持する |
(4) |
考えがまとまらない,人ごみの中に故人を見たような気がする,物事が決められない,食欲がないというのは,正常な悲嘆反応であると説明し,安心させる |
(5) |
故人の思い出話を何度も繰り返すというのは,病的な悲嘆反応であるので精神科受診を勧める |
a(1),(2) b(1),(5) c(2),(3) d(3),(4) e(4),(5) |
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問題6 |
緩和ケア病棟に入院中のAさんの妻は,入院当初から沈痛な表情で「私のほうが毎日眠れないんです」「先のことを考えるとどきどきして涙が出てしまうんです.物忘れもひどいし,物事が決められません.私はおかしくなってしまったんでしょうか?」とスタッフに相談している.妻への対応としてふさわしいものは次の組み合わせのうちのどれか |
(1) |
「Aさんはまだ亡くなってもいないのに,奥さんのほうが今からそんな様子だというのは確かに普通ではありませんね」と精神科受診を勧める |
(2) |
「奥さんが泣いてばかりいては,逆にAさんの方が奥さんのことを心配して安らげませんよ.Aさんのことは大丈夫ですからしっかりしてください」と元気づける |
(3) |
「これからのことで,どのようなことを心配されているのですか」と妻の抱える不安について尋ねたり,今できることを一緒に考えたりする |
(4) |
「先のことを考えて不安で眠れなかったり,つい涙が出てしまうというのはごく自然の反応です」と説明し,必要であればカウンセリングや精神科受診を勧める |
(5) |
「Aさんの死を予想して悲しくなるのは自然の反応です.今からそういう気持ちを表出していけば,亡くなった後の悲しみが少なくなるんですよ」と説明し,感情表出を勧める |
a(1),(2) b(1),(5) c(2),(3) d(3),(4) e(4),(5) |
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問題7 |
次のうち病的悲嘆(複雑化した悲嘆)と考えられるものはどれか |
(1) |
夫の死後3ヵ月にわたる食欲不振,睡眠障害,集中力の低下,抑うつ気分,自責の念,引きこもり |
(2) |
母親の死から1年半後に現れた原因不明の不定愁訴 |
(3) |
夫の死後,妻の喫煙量や飲酒量の増加 |
(4) |
息子が亡くなって数年経っても,息子の話のたびに強い悲しみや怒りに駆られ孤立 |
(5) |
妻の死後,納骨の時期がきても「離れられない」と納骨を拒否 |
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〔症例問題〕
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〔症例1〕 Cさんは,大腸がんに対して化学療法を行ってきたがその効果はPD(progressivediseases)と評価された.腹部膨満感や嘔気・嘔吐,腰部痛や食欲不振などがあり,緩和ケア外来を訪れた.Cさん自身は,「がんは手術で取れたはずなのに,だんだん食べられなくなってきた.だるくて動けないから食欲も湧かないんだよね」と話しているが,夫は「今は身体の調子が良くないから弱気になっているだけ.今の症状さえ楽になれば絶対に治るはず.それにはとにかく食べないと」「がんばって食べなければ,気持ちが先に負けちゃうよ.だから弱音が出てくるんだよ」 と励ましている. Cさんはがんの病名については知っているが,腹膜播種のことは説明されていない.夫は,「Cとはこれまで病気の話をしてこなかった.今は治るという希望があるから前向きだけど,それがなくなったら絶望してしまうのではないか.知らないほうが明るく過ごしていかれるのではないか」と,妻がいないところで医療従事者にその心情を伝えている. |
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問題1 |
緩和ケア外来でCさんと家族との病状や予後の理解の異なりに気づいた場合の対応として正しい組み合わせは次のうちどれか |
(1) |
患者には「知る権利」があることを伝え,現状を知らなければこの先,信頼関係が持てないことを説明し,患者がきちんと病状を理解してから改めて受診してもらう |
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(2) |
「患者に対して病状や予後の説明は必ずしなければなりません.たとえその後,患者が落ち込んでも,精神的フォローも行うから大丈夫ですよ」と夫に保証する |
(3) |
病状や予後について患者が十分な説明を受けていない場合,夫にその理由を尋ねる |
(4) |
家族との面談を設定し,家族の懸念を認識しながら今後患者に対してどのような説明をしていくかについて話し合う |
(5) |
まずは症状緩和に専心し,その他の問題についてはある程度症状が緩和されるまで見守りとする |
a(1),(2) b(1),(5) c(2),(3) d(3),(4) e(4),(5) |
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〔症例2〕 Cさんは緩和ケア病棟に入院し,疼痛は落ち着いてきたが,悪液質の進行とともに全身倦怠感が増悪している.閉眼で臥床がちであり,腹部膨満感や下肢浮腫のために身体を動かすのもつらそうである.Cさんの夫は,「前はあんなに明るかったのに,何て声をかけたらいいのかわからない.部屋にいても,いたたまれない」と,連日見舞いに来てもタバコを吸いに外出したり,売店に行ったりと部屋にいる時間は短いようである. Cさん夫妻には10歳になる長女と5歳になる長男がいるが,Cさんの夫は「子供たちはまだ小さいからわかっていないと思う.病院に連れて来ても周りに迷惑になるだけだから,なるべく連れて来ないようにしている」と話をしている. |
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問題2 |
医療者としてCさんの家族のケアに際してどのようなことを留意すべきか,ふさわしくないものを1つ選べ |
(1) |
Cさん家族に病状説明をする際に,介護者が無力感を感じることはよくあるのだと説明し,Cさんの夫がつらいながらも見舞いに来ていることをねぎらう |
(2) |
10歳と5歳の子供たちというのは,その年齢に応じた現状の理解をしており,その理解に応じた説明が大切であることを伝える |
(3) |
Cさんや夫の兄弟や両親など,Cさん家族のサポートを担える人たちがいるかどうか,家族関係のアセスメントを続ける |
(4) |
子供に対するアプローチは親の問題であり,第三者が介入すべきものではないので,Cさんの夫の「やり方」を尊重して症状緩和に専心する |
(5) |
Cさんの家族に対するケアについて話し合うために,多職種チームでのカンファレンスを計画する(例:看護師が体位交換やマッサージなどにCさんの夫の協力を求めるなど) |
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問題3 |
Cさんの家族が直面する「危機」について,家族機能論を用いたアセスメントとして,ふさわしくないものを選べ |
(1) |
家族内で病気の話がどのように話し合われているか.病気の話がタブーになっていたり,子供たちが自分のつらさを表出しないようになっていないかどうかを把握する |
(2) |
がん罹患によりCさんがそれまで担ってきた家族の介護役が難しくなった場合,それがCさん自身の自己イメージや夫婦の関係性にどのような影響を与えているかを把握する |
(3) |
Cさんの夫が病院に来ている間,子供たちはどのように過ごしているのか,家事分担が家族の中でどのように振り分けられているのかを把握する |
(4) |
夫が妻の介護で精一杯であり,病院に連日見舞いに来ているという状況を,子供たちがどのように理解しているかを把握する |
(5) |
夫は妻の介護役以外にも,子供たちの父親役や家族を経済的に支える役など複数の役割を担っており,夫の負担を軽減するためにその役を家族内の誰に振り分けたらいいかを指示する |
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