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(2011年7月1日~)
ホスピス・緩和ケア専従医のための自己学習プログラム
■Module17■ せん妄と鎮静

〔せん妄・一般問題〕

問題1 死亡までにせん妄を生じるがん患者の割合としてもっとも適切なものはどれか
(1) 5%
(2) 25%
(3) 45%
(4) 65%
(5) 85%
 
問題2 がん患者にみられるせん妄の原因のうち回復可能性(reversibility)が高いものはどれか
(1) 高カルシウム血症
(2) 低酸素血症
(3) 感染症
(4) 肝不全
(5) モルヒネ
 a(1),(2) b(2),(3) c(3),(4) d(4),(5) e(1),(5)
 
問題3 せん妄の重症度を経時的に評価する尺度としてもっとも適切なものはどれか
(1) Delirium RatingScale(DRS)
(2) MemorialDelirium AssessmentScale(MDAS)
(3) Mini-MentalStatusExamination(MMSE)
(4) DiagnosticandStatisticalManualofMentalDisorders-?(DSM-?)
(5) ConfusionAssessmentMethod(CAM)
 
問題4 せん妄に関する以下の文章のうち正しいものはどれか,2つ選べ
(1) せん妄と診断するためには,不穏や興奮状態が必須である
(2) 鎮静によってしか緩和されないせん妄が生じる頻度は,終末期がん患者全体の約10%である
(3) 終末期がん患者にみられるせん妄の90%では,寄与している因子が特定されない
(4) 低活動性せん妄から回復した患者では,過活動性せん妄から回復した患者に比して,苦痛を想起する程度は低い
(5) 回復しないせん妄は,生命予後が不良であることを示す
 
問題5 せん妄に対する単剤による薬物治療として,もっとも適切でないものはどれか
(1) ブチロフェノン系抗精神病薬(ハロペリドールなど)
(2) ベンゾジアゼピン系抗不安薬(ロラゼパムなど)
(3) フェノチアジン系抗精神病薬(クロルプロマジンなど)
(4) 非定型抗精神病薬(リスペリドン,オランザピンなど)
(5) ミアンセリン,トラゾドン
 
問題6 せん妄を予防するために有効な非薬物療法として,適切なものはどれか
(1) 部屋全体に行き届くような照明を夜間つける
(2) 患者の状況が多くの看護師が共有できるように各勤務ごと違う看護師が受け持つ
(3) 家族が付き添えるようにする
(4) 夜間の睡眠を妨げない薬物投与を行う
(5) 時計やカレンダー,およびその日の予定を示したメモを置く
 a(1),(2),(3) b(1),(2),(5) c(1),(4),(5)
 d(2),(3),(4) e(3),(4),(5)

〔せん妄・症例問題〕

〔症例1〕
50歳,女性,直腸がん.3年前に肛門からの出血に気づき,外科を受診し直腸がん(肝転移,肺転移)と診断された.標準的な化学療法が施行されたが効果を認めなかったため,1年前より緩和ケアを施行されていた.
1ヵ月前の腹部CTにて肝臓に直径数cmの転移性腫瘍を数個認め,直腸を中心とする20cmの腫瘍と後腹膜リンパ節への転移を認めた.また,胸部レントゲンにて直径数センチメートルの転移性腫瘍を数個認めた.頭部MRIでは異常を認めなかった.
2週間前の状態は,PS(ECOG;EasternCooperativeOncologyGroup)は2,食欲あり,嘔気・嘔吐なし,浮腫なし,呼吸困難なし,直腸部と下肢の疼痛があったが,ジクロフェナク75mg/日,モルヒネ50mg/日内服にて良好に緩和されていた.他にミソプロストール800μg/日が投与されていた.血液検査所見では異常を認めなかった.
1週間前より嘔吐を認め,数日前よりつじつまの合わない言動が認められたため,緩和ケアに紹介された.初診時,PSは3,疼痛,呼吸困難の訴えはないが,ベッドの上で身体を起こそうとしてどこかへ行こうとする言動と,嘔気を認める.腹部は柔らかく,腸ぜん動はやや亢進している.両側の下肢足背にやわらかい浮腫を認める.血圧140/70mmHg,酸素飽和度97%,脈拍80/分整.
 
問題1 最初に行うべき対処として適切なものはどれか,2つ選べ
(1) ハロペリドール5mg/日の持続皮下投与を開始する
(2) ハロペリドール1mg/日を皮下注射する
(3) 血液検査を行う
(4) 頭部CTを行う
(5) 死亡が迫っている可能性があることを家族に伝える
 
〔症例2〕
50歳,女性,食道がん.2年前に嚥下障害に気づき,消化器科を受診し,食道がんと診断された.化学放射線療法を受けたが,効果を認めなかった.患者は水分や薬剤は摂取できるが,食事ができないため,2ヵ月前より在宅IVHと緩和ケアを受けていた. 前胸部の疼痛に対してジクロフェナク75mg/日とモルヒネ水60mg/日を投与されていたが,疼痛が増悪したためモルヒネ水を90mg/日に増量した.その3日後より患者は傾眠とともにつじつまの合わない言動を取るようになり,主治医より緩和ケアへ紹介された.PS(ECOG)は2,嘔気・嘔吐,呼吸困難,浮腫はなし.血液検査および頭部CTでせん妄の原因となる病態は見出されなかった.
 
問題2 この患者に対する緩和治療として適切なものはどれか,2つ選べ
(1) ハロペリドール1mg/日を夕から眠前に経口投与する
(2) 胸部の持続硬膜外ブロックを行う
(3) モルヒネ水を持続皮下注射に変更する
(4) モルヒネ水をオキシコドンかフェンタニールへ変更する
(5) モルヒネ水を中止して,ケタミンとステロイドを投与する

〔鎮静・一般問題〕

問題1 苦痛を緩和するために,呼びかけに応じないような深い意識の低下をもたらす鎮静が必要ながん患者の頻度として,最も適切なものはどれか
(1) 10%
(2) 30%
(3) 50%
(4) 70%
(5) 90%
 
問題2 十分な苦痛緩和を得るために,呼びかけに応じないような深い意識の低下をもたらす鎮静が必要となる症状として頻度が最も高いものとして適切な組み合わせはどれか
(1) 疼痛
(2) 呼吸困難
(3) せん妄
(4) 不安・精神的苦悩
(5) 嘔気・嘔吐
 a(1),(2) b(2),(3) c(3),(4) d(4),(5) e(1),(5)
 
問題3 鎮静を妥当であると判断する倫理学的根拠としてしばしば用いられるものとして適切なものはどれか
(1) 2重効果の原則(doubleeffectprinciple)
(2) 釣合いの原則(principleofproportionality)
(3) 自律性原則(principleofautonomy)
(4) 公平の原則(principleofjustice)
(5) 無益性(futility)
 a(1),(2),(3) b(1),(2),(5) c(1),(4),(5)
 d(2),(3),(4) e(3),(4),(5)
 
問題4 呼びかけに応じないような深い意識の低下をもたらすために用いられる薬物と,その開始投与量として最も一般的なものはどれか
(1) ミダゾラム20mg/日,持続皮下・静脈注射
(2) ミダゾラム80mg/日,持続皮下・静脈注射
(3) ジアゼパム10mgを8時間ごとに3回/日,静脈注射
(4) ハロペリドール10mg/日,持続皮下注射
(5) フェノバルビタール600mg/日,持続皮下注射
 
問題5 鎮静に用いられる薬剤とその特徴との組合せについて適切なものはどれか
(1) ミダゾラム-耐性
(2) クロルプロマジン-QT延長症候群
(3) ハロペリドール-アカシジア
(4) フェノバルビタール-短時間作用
(5) レボメプロマジン-血圧上昇
 a(1),(2),(3) b(1),(2),(5) c(1),(4),(5)
 d(2),(3),(4) e(3),(4),(5)
 
問題6 鎮静に関して正しいものはどれか
(1) 鎮静を受けた患者群では,受けなかった患者群に比して生命予後が短い
(2) 鎮静薬を持続皮下注射で開始し,患者はうとうとと苦痛のない様子になった.しかし,意識が残っていたので,完全な昏睡になるまで投与量を増量した
(3) 苦痛緩和のためには鎮静薬の投与の他に手段がなく,患者・家族も希望していた.患者の全身状態が不良で,鎮静薬を投与すると呼吸が停止する可能性があったが,少量の鎮静薬を徐々に投与した
(4) 患者は意思決定できない状態であったので,家族に「鎮静を行うかどうかを決めてほしい」と依頼した
(5) 患者が「死ぬ前には耐えられないほど苦しくなることはあるか?」と聞かれたので,「そうなることはないから大丈夫ですよ」と答えた

〔鎮静・症例問題〕

〔症例1〕
50歳,女性,胃がん術後再発がん性腹膜炎.3年前に心窩部痛にて消化器内科を受診し,胃がんと診断された.胃全摘出術を受けたが,2ヵ月後に腹水が増加し,悪性細胞が検出されたため,がん性腹膜炎と診断された.がん性腹膜炎による複数ヵ所での消化管閉塞のため,IVHを施行した.化学療法を受けたが無効であったため,緩和治療を受けていた.
徐々に腹水,胸水,全身の浮腫が悪化し,肝全体を占める肝転移による黄疸を生じた.無尿となったため,輸液を中止した.血液検査結果は,総ビリルビン18mg/dl,BUN(血中尿素窒素)62mg/dl,クレアチニン1.9mg/dl,ナトリウム142mmol/dl,カリウム6.2mmol/dlであった.1週間前よりせん妄となり,ハロペリドール2.5~10mg/日の夕~眠前投与で症状は緩和されていた.しかし,昨日より,全身性のミオクローヌスを伴う過活動性せん妄となり,ベッド上で寝たり起きたりを繰り返している.言葉によるコミュニケーションは取れない.がん性腹膜炎による疼痛の緩和のためにモルヒネ50mg/日が経静脈的に持続投与されている.
 
問題1 この患者の苦痛を緩和するために適切な治療はどれか
(1) モルヒネを70mg/日に増量する
(2) モルヒネをフェンタニール700μg/日に変更する
(3) ミダゾラム20mg/日を持続皮下・静注で投与する
(4) ハロペリドール10mg/日を持続皮下・静注で投与する
(5) フェノバルビタール600mg/日を持続皮下注で投与する
 
〔症例2〕
50歳,女性,肺がん.1年前に咳のために呼吸器内科を受診し,肺がん(骨転移)と診断された.化学療法を施行されたが,Th8での骨転移が悪化し,下肢の不全麻痺を生じたため放射線治療を追加されたが,完全麻痺となった.肝,肺,中枢神経への転移はない.自宅介護ができないため,精神科医のいない総合病院に,入院して緩和治療を受けていた.
1ヵ月前より患者は,「動けないのに生きていても意味がない.もうずっと楽しいこともないし,悲しい.生きていても迷惑をかけるだけだ.早く楽にしてほしい,眠らせてほしい」と強く訴えるようになった.全身状態はPS(ECOG)4で,生命予後の予測は3~5ヵ月程度である.嘔気・嘔吐・浮腫・呼吸困難はない.疼痛は背部にあるがジクロフェナク75mg/日と経口モルヒネ20mgで緩和されている.食欲はなく,便秘,口渇,全身倦怠感,および不眠がある.
 
問題2 この患者に対する対処として適切なものはどれか,2つ選べ
(1) パロキセチンとベンゾジアセピンを今夜から眠前に投与する
(2) アミトリプチリンとベンゾジアセピンを今夜から眠前に投与する
(3) 精神科診療を受けれるように単科精神病院へ紹介する
(4) 日中にミダゾラムを用いた間欠的鎮静をする
(5) 看護師を含めたチームカンファレンスを行う
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