(公財)ホスピス財団 メールマガジン「今月のお便り」 vol.78
 
 新型コロナウイルスに罹患された方々、またコロナ禍により生活面等で困難な中におられる方々へ、 心よりお見舞い申し上げます。
 また感染症対策に尽力いただいている保健、医療従事者の方々へ心より感謝申し上げます。
ホスピス財団 理事長 柏木 哲夫
 
新型コロナウィルスへの対応について
 
今月のコラム

大谷 正身氏
ホスピス財団事務局長
大谷 正身
  小さくされた者

 柳美里さんの小説「JR上野駅公園口」が、昨年11月全米図書賞という栄誉ある賞を受賞したことを知り、好奇心から手に取ってみた。1964年東京オリンピックの前年に出稼ぎ労働者として福島県相馬郡から上野に上京、高度成長ののち、最後は路上生活者になった男性が主人公である。柳美里さんが一貫して取り組んできたテーマ「居場所のない人に寄り添う物語」であるとのこと。
 昨年、米国で翻訳出版された本書が、どのような理由で受賞したかは、私には定かではないが、黒人男性が警官による暴力で亡くなった事件、それに伴い「Black lives matter」が大きな抵抗運動となったこととは無縁ではないと思われる。また、この受賞と時を同じく国内においても、バス停のベンチで寝ていた路上生活者の女性が殴られ死亡したという痛ましい事件、さらには今回の東京オリンピックの影響で、上野公園の路上生活者が強制的に立ち退きさせられている事実や、コロナ禍で失業し、行き場を失なった多くの人々がおられる現実など、本書が31版を重ねる所以であることは想像に難くない。
 読後、ふと新約聖書にあるイエスの語ったことば、“この小さい者たちの一人が滅びることは、天におられるあなたがたの父のみこころではありません”が心に浮かんだ。
 ここでの小さい者とは、子どもだけを示すのではなく、虐げられたもの、社会的に排除されているものなど、弱者を指す言葉と考えていいと思う。この聖書箇所には、別訳もあり“この小さくされた者のひとりが滅びることは、・・以下略”・・・“と訳されている。*¹ さらにイエスは、“あなたの隣人を自分自身のように愛しなさい”とも語っておられる。ここに言われる隣人とは誰かということになるが、イエスは具体的な例を「よきサマリヤ人」のたとえ話 *² で示されている。ここで分かるように、小さくされた者が、すなわち隣人であると理解できる。
 著者の柳美里さんとっての隣人とは、「居場所のない人」、イエスの言う“小さい者(別訳;小さくされた者)であり、この路上生活者である主人公へ愛のまなざしが注がれ、その視座でこの小説が書かれたものであると思わされた。それ故に、本書が私自身を含め、多くの人に共感を与えたと思うのである。
 翻ってホスピス・緩和ケアに係る者にとっての“小さくされた者”“隣人”、それは言うまでもなく、余命の限られた患者の皆様と、そのご家族であり、日々、これらの小さくされた人々に寄り添い、ホスピスケアに尽力されている医療従事者の皆様に、改めて敬意を表するとともに、ホスピス財団も、その一翼を担いつつ、進みたく願うものである。

*1;本田哲郎個人訳
*2;ルカの福音書10章25節~37節
     
頁トップへ
ホスピス財団主催・協賛の研修会、セミナーのご案内
第4回 日本 Whole Person Care 研究会が開催されます
 
 
第4回 日本 Whole Person Care 研究会のチラシ   第4回WPC研究会:「事例検討とマインドフルネスの教育」

■テーマ:「Whole Person Careの事例検討とマインドフルネスの教育」
■日 時: 2021年8月7日(土)13:30~16:30
■大会長: 三原 弘氏(富山大学)
 
申込み方法等の詳細はこちら

詳細をみる
頁トップへ
日本 Whole Person Care 研究会 第3回オンライン読書会が開催されます
 
 
『 Whole Person Care 実践編 』の表紙    日本 Whole Person Care 研究会主催の第3回読書会が、
9月10日(金)に開催されます。

■日時:9月10日(金)19:00〜20:30 ZOOMにて
■課題図書:
 「Whole Person Care 実践編ー医療AI時代に心を調え, 心を開き, 心を込める」
  7~9章

 関心のある方はどなたでもご参加いただけます。
 可能なら事前に課題図書7章―9章をお読みください。
 申込み方法等の詳細は後日、ご案内します。
頁トップへ
お知らせのコーナー
『 Whole Person Care 実践編 』 ー医療 AI 時代に心を調え、心を開き、心を込めるー が好評発売中です
 
 
『 Whole Person Care 実践編 』の表紙    本書は Whole Person Careに関するホスピス財団発行が発行する2冊目として、既刊『新たな全人的ケア・・医療と教育のパラダイムシフト』に続いて、6月より三輪書店より全国で発売されています。
医療に携わる方々を始め、医学生、看護学生の皆様、ホスピス緩和ケアに関心のある方々、 是非ご一読ください。

 
詳細をみる
頁トップへ
J-HOPE4が発行されました
 
 
J-HOPE 4 の表紙    世界的に質の高い研究として国際的にも評価されている調査・研究が、この度 J-HOPE 4 として発行されました。
 今回は付帯研究が50題と充実していますので、是非ご覧ください。
ホームページでも公開しておりますが、ご希望の方には 1000 円で頒布いたします。(ホスピス財団賛助会員には無料で送付しております)

頁トップへ
『新たな全人的ケア・・医療と教育のパラダイムシフト』好評発売中
 
新たな全人的ケアの表紙  
 「Whole Person Care:A New Paradigm for 21Century」(Springer 社 2011年)の日本語訳として『新たな全人的ケア:医療と教育のパラダイムシフト』を青海社より全国で発売中です。
 Whole Person Care とはカナダ、マギル大学医学部で開発された、新しいケアの概念であり、従来の考え方を根本的に変えるアプローチです。
 是非、ご一読ください。
 
詳細をみる
 
 
頁トップへ
情報コーナー
情報コーナー
ホスピス・緩和ケアに関する新聞記事の紹介
 
・私の道 娘が開いた ・・末期がんで尊厳療法
末期がんで神戸アドベンチスト病院ホスピスに入院中である、元養護学校長であった白石充夫さん(70)が、自分の人生を振り返り「ディグニティ・セラピー」に取り組んでいる姿を取材した記事。 白石さんの次女、季世子さんは重い脳障害があり、彼女と歩む人生から養護教育に取り組む人生を 歩まれたとのこと。
(毎日新聞 2021/07/16 夕刊掲載)

・父のみとりから見えた死 ・・・「メメント・モリ」身近に
経済学者の宇沢弘文氏の長女、占部まり医師は、自宅で父を看取ったことがきっかけで、日本メメント・モリ協会を設立し、どのように死を迎えるかを考えている医師である。占部さんのこれまでの歩みと、死生観を、ジャーナリストの池上 彰さんがインタビューした記事。
(毎日新聞 2021/07/18 掲載)

・つながりの中で生きる ・・・・滝野隆浩の掃苔機記(2回連続)
小説「臨床の砦」の作者で、医師である夏川草介氏を取材した記事。新型コロナウイルス感染症に立ち向かう姿が描かれているが、夏川医師は患者とのつながりを大切にし、「つながりのある人の人生は明るく見えます」と語っておられる。
(毎日新聞 2021/07/11、18 掲載)

・患者のきょう 笑顔に ・・・・問い続ける 生と死
元俳優の高部知子さんは、重い心臓病をもって生まれた娘の体験を機に、患者や家族に心のケアを目指して精神保健福祉士と心理士の2つの国家資格を取り、京都で仏教医学を用いたケアを実践していることを取材した記事。
(毎日新聞 2021/07/11 掲載)

・乳がん 語らいの湯 ・・・「乙女温泉」全国へひろがる
乳がん手術で乳房のなくなった女性でも気軽に銭湯へ行けるように、尼崎の「蓬莱湯」が協力して2020年10月から始まり安心して交流がなされ、それを機に全国に「乙女温泉」として拡がっていることを紹介した記事。
(毎日新聞 2021/07/07 掲載)

 
 
詳細をみる
頁トップへ
■このメールマガジンは、ホスピス財団の賛助会員をはじめ、ホスピス・緩和ケア医療従事者の皆様にお送りしております。また、お知り合いの方々にも転送していただけると幸いです
個人情報の取り扱いについて
■メールマガジンの受信の停止は、こちら からお願いします。
 
発行:ホスピス財団(公益財団法人 日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団)
〒530-0013 大阪市北区茶屋町2-30
TEL:06-6375-7255 FAX:06-6375-7245
mail:hospat@gol.com URL:https://www.hospat.org/
Copyright(c)2014 Japan Hospice Palliative Care Foundation All Rights Reserved.